第170話 スノードロップの地で

 撮影後は急いでテントを設営した。

 場所はスノードロップの花畑の近くで花が咲いてない場所。踏まないように。


 そしてランタンの灯りでキャンプ飯だ。



「ショータ、魔法の灯りでスノードロップを照らしてやろうか?」

「えっ、ジェラルドはそんな事ができたのか! ぜひともよろしく!」

「この辺は魔力に満ちてるから多少は無駄使いできる」

「へー、そうなんだ」

 


 ジェラルドは丸いマジックライトをいくつも浮かべてスノードロップを優しく照らした。まるで……妖精の灯りのようだ。


 星空とスノードロップのライトアップを見ながらキャンプ飯! 

 最高かよ!


 俺はバスケットの中身のクロワッサンのサンドイッチとコーンスープとブルスケッタを用意する。


 ドールの二人には甘いチロ◯チョコ。

 種類も豊富で大きすぎず、サイズがちょうどいいらしい。


 そんで魔法の風呂敷から俺はキャンプセットの火の使える道具を3つほど用意した。


「そっちのオーブンにバケットを乗せといてくれ、俺はインスタントのコーンスープ用のお湯を沸かしてベーコンを焼く」

「バケットをストーブでカリッとさせればいいの?」


 既に完成してるクロワッサンサンドを食べながらミレナも手伝ってくれる。

 カナタはマグカップなどを魔法のカバンから取り出して並べ、お湯を注いでくれた。


 ドールの二人はラッキーにカリカリやジャーキーをあげつつ、チョコなどをつまんでる。


「そう。その後に豚の頬肉のベーコンを乗せる」


「赤ワイン開けるぞ」

「おー、ジェラルドありがとう」


「バケットが焼けたわよ」

「おう、サンキュ、それにこのベーコンを乗せればブルスケッタの完成だ」


 赤ワインと共にいただく。


「ブルスケッタって?」

「ブルスケッタとは焼いて焦がしたもの、という意味があるそうで あぶって表面をカリッと焼いたバケットの上に、ガーリックやベーコンやトマト、オリーブやアンチョビなど、いろいろな具材をのせて食べる料理だよ」


「へー」

「古くなったパンを美味しく頂くための工夫だそうだ」


 ネットで得た知識を披露した。


「このパン古いの?」

「実はこのパンは古くないけどな、そういう生活の知恵から生まれたパンって話な」

「ふーん」


 ミレナの素朴な疑問に答えてから、俺もブルスケッタやワインを楽しんだ。


「花畑に魔法の灯りなんて幻想的だね〜」


 カナタはさっきからカメラを回してくれてるが、お前もちゃんと食べろよ?


「あ、プチトマトやアンチョビやオリーブが良けれぱこちらをどうぞなんだぞ」


 俺は魔法のカバンから追加食材を取り出した。


「じゃあそちらも試してみるか」


 ジェラルドが色々な具材を乗せるブルスケッタにチャレンジするようだ。


「どうぞどうぞ、ほら、カナタも俺が撮影変わるから飯を食え」

「マスター、撮影なら私が」

「私もお手伝いできます」


 ミラとユミコさんがカメラマンをやってくれるらしい。


「二人共、もうおやつはいいのか?」

「「はい、十分ですー」」

「ミラちゃん、ユミコさん、ありがとう」


 カナタもお礼を言ってカメラマンをドールの二人に任せ、ようやく落ち着いて食事をはじめた。


 確かにこの様子の撮れ高はあるもんな。


 そして楽しく飲み食いをした後にテントで朝までぐっすり寝た。

 見張りはラッキーとドールの二人が受け持ってくれたのである。


 * * 


 朝焼けの中、爽やかな鳥の声で俺、起床。


「朝ぁ~」


 朝焼けの中のスノードロップも良き……。

 俺が大きく伸びをしてから体をほぐし、花畑をゆっくり眺めてたら草を踏む音が近づいてきた。


「おはようショータ」


 サクサクと草を踏む音がしたと思ったらラッキーを連れたミレナだった。


「おはようミレナ、朝からラッキーを散歩に連れて行ってくれたのか?」

「川に顔を洗いに行ったら勝手についてきたのよ」

「あはは、早朝に女の子一人だから心配だったのかな」

「ワフ……」


 俺はラッキーを撫で回してもふもふ充した。



 いつの間にかジェラルドも起きてて、火を炊いていた。

 お湯を沸かしているらしい。


「朝は何飲む〜? コーヒー?」


 ジェラルドと火の側に近寄る俺。


「お湯が飲み物用だと思ったか? カナタに頼まれて顔拭きタオルを作るところだ」

「あー、そっちか、温かいタオルね」


「温かいタオル! そんなものが!」 


 わざわざ顔を洗いに川まで行ったミレナがしまったという顔をしてる。

 水はきっと冷たかっただろうな。


「春が来たとはいえ、まだ朝は寒いからな」

「まあ、昨夜の飲み食いした分の腹ごなししたと思えばいいじゃないか」


 適当に慰める俺。


「カナタ! 温かいタオルできたぞ!」

「ありがとう、ジェラルドさんー」



 カナタがテントから出てきた。

 こうしてお湯を用意したジェラルドとカナタに便乗して男達は温かいタオルで顔を拭いた。



 ミレナがその様子を見て憮然とした顔をしたので、


「男の僕達が起きる前に身支度しててえらいよねー」 


 などと言ってカナタがミレナを慰めていた。

 今朝はまだウイッグも被ってないので確かに男で合ってるなと、思いつつ、今日も1日がはじまった。














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