第169話 エルフの里と興奮する俺

 エルフの女の子と泥にまみれて穴を掘った後に、

「やー、泥まみれだ。洗わないとな」

 と、俺が言ったらエルフの少女が、


「穴掘り手伝ってくれたお礼」


 と言って、なんと水魔法で手や足の泥汚れを消してくれた!


「すごい! 小さいのにもう魔法が使えるんだね! 流石エルフ! ありがとう!」

「ちっさくないもん!」

「はい! すみません!」


 なるほど、小さいと言われると反発したい年頃なのか。

 見た目が小学生くらいだからつい口が滑る、気をつけないとな。



「この穴を放置して明日あたり見に来たらお魚が入ってるはずだから」

「いっぱい入るといいねー」

「うん」


「終わったのぉ〜?」


 眠そうなミレナが声をかけていた。


「穴掘りは終わったよ!」

「あ、そ」

「ビオラちゃん、里の入り口近くまで君を送っていいかな? ジェラルドがまだ戻らないし」

「いいよ~」


 許可を得たのでエルフの里の入り口近くまで送らせて貰った。


 ビオラちゃんの道案内で後ろについて森を歩いて行くと……エルフの里が見えた!!


「おお……」



 巨大な木がいくつも家の形状をしていたし、幹の上部分に家を乗せ、その周囲にもやはり枝木が伸び、芸術的でそこかしこにミモザの黄色も彩りを添えていた。


 この素晴らしく美しいファンタジー的な光景に思わず見惚れる。



「これがリアルツリーハウスってやつかなぁ、凄いね」

「ああ、圧巻だ。エルフの里の家が見れるなんて感動だ! ジェラルドの森の家みたいなのがいくつもあるなんて」

「しかもそこかしこに黄色いミモザの花が咲いてて綺麗だね」

「ああ、かわいい、ちょっとミラとユミコさんも見れるように起こすかカメラ回すか」


「マスター、起きました」

「わぁ! 綺麗」


 いつの間にか背負っていたリュックから顔を出してる二人。


「ここは魔力が豊富なようですね」


 ミラが里を眺めながら語る。


「ああ、それで魔力が充電されたのか」

「じゃあニンゲン、送ってくれてありがと!」

「はい! 元気でね!」


 俺達はエルフの村の外側から手を降ってビオラちゃんを見送った。


 村の入口の守衛なのか大人の男性エルフに余所者の人間だなって目を向けられて、ちと居心地悪い。


「ジェラルドの友人です、近くにあるスノードロップの群生地を見に来ただけです、すみません」


 思わず言い訳をした時にちょうどジェラルドが村の入口に戻って来た。


「持たせたな」

「ジェラルドの里帰りはもういいのかな?」


 一泊すらしてないのでほぼ一瞬だが。


「ああ」

「えっと、じゃあそこのエルフさんに良ければこの果物でもどうぞってあげて」

「ああ、悪いな」


 俺はシャイ◯マスカッ◯といちごと桃とメロンなどの贈答品をお土産として渡すことにした。


 先程は思わず穴掘り中のエルフの少女に釘付けに意識を奪われていたが、先にお土産としてジェラルドに渡しておけばよかったなどを思った。


 ジェラルドは俺の渡したフルーツ詰め合わせの籠を抱えて守衛の元へ行き、


「いくつかはお前たちで食ってくれ、そしてこの黄緑色の葡萄は長に渡しておいてくれ。皮ごと食べられる珍しい葡萄だ」


 と、言った。


「そうか、分かった」


 守衛は了承した。



「旅の醍醐味だなぁ、エルフの里が見れるなんて、ありがとうございました〜」

「失礼しました〜」



 俺とカナタはエルフの里に向かってお礼や挨拶を投げかけてそこを離れた。

 村の中までは恐れ多くて入って見たいとは言えない。

 同族の人間が女性エルフを攫ってるなんて聞いてしまってるしな。


「さて、早速スノードロップの群生地に向かうか」

「うん、ジェラルド、先導をよろしく!」


 また森の中を歩いて、そこに着いた時はもう夕方になってしまった。


 しかし、美しい! 白くてかわいいスノードロップの花畑だ!


「わぁ~〜っ!!」

「夕陽と花を見るのも乙なものだねぇ」


 俺は夕焼けが終わる前にと急いで魔法の風呂敷から着替用テントと折りたたみの木のテーブルセットを出した。



「ミレナとカナタは急いでエプロンドレスに着替えて撮影準備を頼む!! ミラとユミコさんは鈴蘭ドレスに!」


「「はーい!!」」


 俺はテーブルセットにランチボックスを置いて

 ピクニックシート代わりにキルトの布を花を避けて敷いて、かわいいピクニックバスケットなどを急いで配置した。


 早着替えをして来たミレナとカナタが出てきた。


「二人共そこのキルトの敷物の上に座ってくれ!」

「はーい」

「この辺でいいかな?」

「いいぞ! 夕陽の方を見て! まずバックショットもらうから!」



 テンション爆上げで撮影をする俺。

 ジェラルドはこんな時にも撮影を優先する俺に若干呆れてたが、あまりにも映えなので仕方ない。



「じゃあ今度はこっち向いて! あ、ミラとユミコさんも準備できたなら入って!」

「俺がカメラ撮影をやるからショータも入ったらどうだ?」


「むしろジェラルドが入ってくれ! その辺で佇んで!!」

「ハイハイ」

「美しい! 最高! 夕陽と花畑とエルフ!!」


「ねー、こっちはもういいの?」


 そう言いながらピクニックバスケットをガン見するミレナ。


「まだ! 次にミレナとカナタ、後ろ姿でゆっくり走って! 良ければ二人で手を繋いで!」

「なんで手を繋ぐの?」


 というミレナの問いに、


「それも超映えるからだよ!」


 などと俺は叫んでいた。


「仕方ないわねぇ〜」

「そこまでやらなくても、ミレナさん、ごめんね」

「別にいいけど〜」



 俺は嬉々として写真も撮るし、動画も撮影しまくった。


「ねぇ~ピクニックバスケットの中身気になる〜」


 この食いしん坊狐さんは仕方ないなぁ。


「クロワッサンサンドとか果物が入ってるよ!」


 ハムやチーズが挟まってる。


「食べていい?」

「写真撮ってからなら」

「食べ物も撮るの?」

「そう!」


「あと、食べてるとこも少し撮影させてくれ」

「変な事に夢中になる人間だわ」

「あ、瓶入りのミルクやフルーツ牛乳もある! かわいい!」


 流石カナタ! 分かってくれたか!



「だろ!? 瓶入りのかわいよな!」

「映える映える!!」


「ワフ……」


 興奮気味の主人を見てラッキーが小さく鳴いた。


「後でラッキーにもミルク飲ませてやるからな!」

「ワフ!!」



 普通の犬ならミルクより多分水とかのがいいんだと思うんだが、ラッキーは帳面から出てきた特殊なやつだし、多分大丈夫だろう。














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