第165話 晴れ間に向かって走る

 ジェラルドの言う通りかもしれないので、意味ありげなラッキーの後をついて行った。


 そして一軒の廃墟の家の前で足を止めたラッキーが俺を振り返った。

 どうやらここらしい。


 なんとなく嫌な匂いがすると思いつつも、扉を開けたらにゴブリンに攫われたのか、元々この村の住人だったかは不明だが、囚われていた女性が三人ほどいた。

 皆、服を剥がれて手は縄で縛られ、逃げられないように足の骨は砕かれていたようで、やばい色に変色していた。

 あまりにボロボロな痛ましい姿に俺は思わず、



「ああ、なんてことだ……」と、呟いてしまった。



 俺は着替えとウエットティッシュの身体ふき用を女性のミレナに託し、男なのでさっさと家の外に出た。

 こんな状況に対応出来る女性が仲間にいて助かった。


 ややしてミレナが戻ってきた。



「ところであの娘達をどうやって人のいる安全圏まで移送する? 歩く気力もないみたいよ」

「あ、じゃあピーちゃんを呼んで最寄りのギルドに頼んで馬車持ちの人を呼ぶよ。そして服を着せたならひとまず俺が浄化と治癒魔法をかける」



「分かった。俺が手紙を代筆しておくからショータは治癒を」

「ありがとう、ジェラルド」



 ギルド依頼用の手紙の代筆をジェラルドにまかせて俺は傷ついた女性達に浄化と癒やしの魔法をかけたが、体の傷は治せても心までは難しかった。


 三人とも死んだような虚ろな目をしていた。


 とりあえずジェラルドの手紙を託す為にピーちゃんを呼んで、ギルドの人達が到着するまでここに待機することにした。



 また近くの森の中から新たなゴブリンとかが来たら困るし。


 その後に温かいポタージュスープと柔らかなロールパンとデザートにプリンをあげた。

 プリンは美味しいし、栄養があるからな。

 俺達も同じものを食べた。


 女性達は涙を流しつつ、プリンを食べた時に小さく「美味しい……」と呟いた。


 俺達は女性達が囚われていたのとは違う廃屋で一晩過ごした。


 翌日にギルドからの人が女性達を乗せて運べるよう幌馬車ごと来てくれたのでギルドの人と女性達にスティックパンとチーズ蒸しパンとのど飴とりんごと、後は水筒ごと飲み物を渡した。


 チーズ蒸しパンは俺が風邪などであまり食欲のない時にもかろうじて食べられたパンだからなんとなく入れた。



「じゃあ、彼女達を安全な所までよろしくお願いします」

「はい、とりあえず外傷は無くなっているようなので修道院に連れて行きます」



 俺は依頼料を手渡し、受取りのサインを貰ってギルドから派遣された三人組と別れた。


 なるべく女性のいるパーティーが良いって、依頼したらちゃんと女性二人に男性一人の三人組が来てくれたから多分大丈夫だろう。

 ややハーレム感があるが幼馴染同士らしい。


 俺達はコンビニの塩おにぎりに沢庵とインスタント味噌汁で簡単に食事を済ませた後、


「さて、俺達まで沈んでいてもしょうがない。気持ちを切り替えて森に向かうぞ」

「おう!」


 ジェラルドの先導でチャリを漕ぎ出す。

 ラッキーも走って後を追う。



「こっちはまだ曇りだけど向こうの空は晴れてるねー」

「そうだな!」


 カナタの言う通り、遠くの空は晴れていた。


 晴れてる空の下にある森を目指し、俺達は走り出した。

 いつか傷ついた彼女達の心にも、晴れが来るように祈りながら。



























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