第153話 急なバイト話

「ひとまず出かける前にうなぎ弁当30個とトンカツ弁当30個か頼んでおいていいかな? 多すぎ?」 


 とんかつはともかく、うなぎは高級食材なので少し躊躇する。


「例えば芸能人の楽屋用にとか沢山頼まれるだろうからいいと思うよ」


 そして仮眠から起きて弁当をネットから注文をして、俺達は車を受け取りに行った。


 ディーラーの元でピカピカの新車を目の前にして、俺は色んな角度から写真を撮りまくる!


 これは傷がないかとかチェックの為にも有効な行為である!


 しかし、傷のようなものは幸いなかった。



「ついに念願のマイカーを手に入れたぞ!」

「じゃあ次はドールショップで鈴蘭ドレスを買うんだね」



 そう、今日はドールショップも行くからカナタには女装してもらってる。

 男一人では入りにくい。

 カナタの財布男のふりして乗り切ろうと思ってる。


「ああ、それとあちらで景色のいいとこ行ったら写真撮るからミレナとカナタのかわいい服も買おう」


「え!? 僕らだけは悪いよ、ジェラルドさんと翔太も何か」

「ジェラルドはいいけどおじさんがスノードロップの花畑で写真を?」

「別にいいと思うけど」


 などという会話をしつつ車を走らせ、近くの有料駐車場に車を停めてドールショップへ向かった。


 そして店に到着。

 新作発表だけあって人が多い!!


 一階にかわいいドール達が沢山並んでて、2階にたくさん服が売ってある。

 でも今日は凄く人が多くてじっくり見てる余裕がない!


 あらかじめ言ってあった欲しいドレスやら靴やらをカナタがカゴに入れてくれて、お会計。

 じっくり見てる暇がないから早々に退散。


 店から出て車に乗り込み、駐車場を出た。



「えーと、次はどこだった?」

「姉貴のとこに通販したものを取りに、あ、お土産も買って行こう。頼み事してるから」



「ならお姉さんの家に着いたら僕は車の中で待ってるね!」

「そういやその姿を見せたらとうとう彼女できたのかって誤解しそうだな」


 途中でカナタにネットから注文してもらったお土産のドーナツをドライブスルーで購入し、姉の家に到着した。


 俺はお土産を手にし、カナタを車の中に残したまま玄関のチャイムを鳴らす。


 はいはーいという姉の声が玄関扉の向こうから聞こえた。


「姉貴、あけおめ~」

「遅くない? 三が日もとうに過ぎたわよ」

「忙しいから仕方ないだろ、それより頼んでたやつを」

「ハイハイ」


 姉から注文を頼んでいた抗生物質などを受け取った。


「サンキュー! じゃあこれはお土産のドーナツな」

「お、気が利くじゃないの、しかもこれ有名なチョコレートショップのコラボのやつじゃない」

「まあね、SNSで写真見て美味そうだったから」


「あー、おじちゃん!」


 姉貴の子供がわらわらと玄関に駆けつけた。


「あ、明けまして今年初だな、お年玉をあげよう」

「やったぁーっ!!」

「お年玉!」


 子供にお年玉を五千円ずつあげて車で待機してるカナタが見つかる前に退散。



 車に乗り込んで発進。

 助手席にいるカナタに話しかけた。



「カナタ、お待たせ、すまんな」

「大丈夫だよ」

「待ってる間にドーナツでも食ってればよかったのに」

「新車にドーナツの粉とか落とすと悪いし」

「たいして気にしない、蟻がいたら発狂するかもだが、冬だしいないよな」


「えーと、ドーナツは帰ってから食べるよ」

「分かった。じゃあ人間の服も買いに行くか、あ、狐の獣人とエルフのも」


「あはは、そうだね」


 撮影用のかわいい服やら。売り物の下着やらをカナタに頼んで、俺は男物の服を見て適当に選んで買ってから店から出た時に、先日の冬の祭典で会ったカナタのレイヤー仲間の女性とはち合わせした。



「やだ、エスタさん! 天の助けー!」

「は?」

「ちょっとお時間ありますか?」

「いや、カナタと待ち合わせしてて」

「ますますちょうどよかった!」



 なんだ? 一体なんなのだ?



「はい?」

「ちょっとお二人でノロウイルスでダウンした友人の代理で執事喫茶に行って執事をしてくれませんか?」

「はあ!?」


「友達の姉が経営してる店なんで助けてください! 予約も入ってるので!」



 ええー!?

 俺とカナタが執事を!?







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