第123話 見知らぬ少女の夢
1日下準備の時間としてもらってから、翌日にお店を開店することにした。
そして商業ギルドの人が荷馬車と共にやって来たので孤児院への贈り物は持って行って貰った。
そして開店当日。
下人達や騎士達までが寒い中並ぶんだろうなと思ったら案の定だったので、整理券を配った。
そして開店!!
「いらっしゃいませ! お待たせしました!」
俺たちが一様にそう言ってお出迎えすると、
「やっと開きましたわね!」
「待ってましたわ」
「主命とあらば並ばざるをえない」
皆様待ってましたとばかりに続々入店。
「「ティッシュを!!」」
「そう、その紙類!」
「レースを!」
「その花柄の布を!」
「その化粧品を一式くださいませ!」
「れ、例のゴムを……」
「早く今月のカタログを出してちょうだい!」
「胡椒と砂糖を」
「はい、ただいまお持ちします!」
「かしこまりました!」
上も大変な賑いだ。
そして二階の雑貨屋でまだ入店できない人が一階にあるカフェで時間を潰してたりもする。
「パンケーキを人数分と紅茶を」
「ワッフルとコーヒーを2人分」
「ケーキと紅茶を四人分を」
「コーラとチキン南蛮弁当を人数分」
「ハンバーガー4とコーラ2」
「「かしこまりました」」
今日も目が回りそうなほど忙しかった。
「皆、お疲れ様!」
「うー、流石に疲れたわ、あと金は出すからもっと広い店を出すか店舗を増やせと言われまくるわ」
疲れてるミレナの肩をフェリがトントンしてる!
かわいい!
「うーん、やはり店を増やすか? 代理店長とかいりそうだけど」
深刻な人手とスペース不足。
「それはいるだろうな、人材なら俺も探してみよう」
「ありがとうジェラルド!」
「ゴムとかティッシュとか調味料とかの雑貨と下着は別の店舗で売るとかさ」
「そうだな、カナタの言う通り、そのあたりの店舗は分けた方がいいんだろうとは思ってた」
「うん、ゴムの人とかがちょっと毎回肩身が狭そうでさ」
「やはりそう思うか、じゃあ店舗を増やす為の出資希望者を募るとポスターでも作るか!」
俺は魔法の風呂敷からB4サイズのコピー用紙を取り出した。
コピー用紙は薄いから文字を書くのはマジックでいいかな。
下に新聞紙でも敷いて。
「ねー、雑貨屋の方はまた1日で買い尽くされたけど、カフェの方はあと何日もつの?」
「あと4日くらいかな」
「毎月5日くらいしか営業してないおかしな店だわ」
「ハハハ……! でもミレナには神楽舞の練習があるぞ!」
「分かってるわよ」
「神楽舞の分のお手当ても出すからな」
「当然よ、ソフトクリー厶も忘れないでよね!」
てなわけで、
「あと4日ほどカフェの仕事を頑張って、それから神楽舞の衣装をどうにか仕上げよう」
「買ってきた出来上がってる服を使う訳じゃないの?」
「そこは翔太のこだわりが炸裂してて、買ってきたものに手を入れないといけないんだよ、僕もミシンとかで協力するけど」
「ミシンって何?」
「ミシンって言う布を縫う機械があるんだよ、手縫いより速くて便利なんだ」
カナタが代わりに答えてくれた。
「へぇ?」
「ミシンの動画を見せるよ、お好み焼き弁当でも食いながら見よう」
俺がプロジェクターを用意しつつ、そう言ったら弁当のワードに反応したのかミレナの耳がピン! と、立った。
「オコノミヤキ?」
「粉もの料理だよ。あと御土産の揚げ湯葉まんじゅうがある」
ちなみに弁当という単語は何度もカフェ内にて提供してるのでもう覚えているらしい。
俺は魔法の風呂敷から持ち帰り容器に入れているお好み焼きをだした。
「変わった香りのケーキ?」
ミレナはお好み焼きを見て、首を傾げた。
「お好み焼きだよ」
「とりあえず食べてみるか」
「このお好み焼き美味しいよ!」
カナタもおすすめの味だ。
「じゃあマヨネーズをかけて……あ、ラッキーはドックフードな」
「ワフ!」
2種類のお好み焼きは格子のような形で切られているので、それを皆の皿に分けていった。
「なんとも味わい深い。海老も入っていて美味いな」
「このお好み焼きはミックスと海老玉子だよ」
「なるほど、海老玉子」
「あら、この揚げたやつ、すっごく美味しい!」
ミレナはお好み焼きより先にデザートに手をつけていた。
「御土産の揚げ湯葉まんじゅうだよ」
「この揚げたやつ、まだある?」
「すまんな、もうないんだ」
「ぬう……」
そんな女の子が世紀末覇者みたいに、ぬう……などと。
ミラとフェリとカナタは熱心にミシンの映像を見ていたが、ミレナとジェラルドはなるほど、こういうものかと、確認したらすぐに弁当の方に集中した。
* * *
4日ほど皆でカフェの営業を頑張った。
仕事終わりのその日の夜は疲れ果てて、俺は倒れるようにベッドに入って眠った。
そして嫌な夢を見た。
何故か会った事のない知らない黒髪の巫女服の少女と、知らない神職の服を着た男達がいた。
巫女服の少女は酷い様子で倒れている。
口からは血を流し、苦しそうに息をしている。
「この女はやはり偽物だけあってもうだめだな。
せっかく巫女たちの神聖力の混ざる血を飲ませてやったと言うのに」
無理矢理他人の血を飲ませた!? 吸血鬼じゃあるまいし!
なんて無茶な事を!
「それより大神官様、神聖力の為に巫女達を犠牲にした分、罪が重く……追手が来る前に早く移動しませんと」
「偽物の聖女はどうしますか?」
「そいつは既に壊れている、服を着替えさせて森にでも捨ておけ、獣が始末してくれるだろうし、さもなくば寒さで……」
!?
俺は嫌な汗をかいて目が覚めた。
まだ冬の早朝、今は四時くらいか、外はまだ暗くて寒々としている。
「ワフゥ……」
ベッド脇で寝ていたラッキーが悲しそうな声で鳴き、何かを伝えたそうな目で俺を見てた。
「ただの夢とも思えないな、とてもリアルで……探してみるか? 森を」
「ワフ!!」
もしかしたらまだ森にいるかもしれない。
偽の聖女と言われていた、あの黒髪の少女が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます