第46話 鰻を食べた。

 朝市でうなぎを追加で買ってきてそれを捌いてから、うなぎのタレで朝食として食べた。



「やっぱりこの甘辛のタレが合ってて美味いな!」

「中はほくほくしてて身が柔らかくて美味しいわね」

「確かにこのタレがすごく美味い」



 ミラは食事が出来ないので休ませている。

 代わりによしよしと撫でてやったり髪を丁寧に梳かしたりして可愛がっている。



 ともかくこれでエネルギーも充電できた!

 昼からのカフェ営業も頑張るぞ!




「ハンバーガーとポテトのセットでございます」

「お、狐の君かわいいね、今日は仕事いつ頃終わるのかな?」

「分かりません、忙しいので失礼します」


 ミレナがナンパされてる! 

 この忙しい時に!

 でも塩対応でいなしたな。



「パンケーキのお客様、お待たせいたしました」

「本当にエルフって美しいわね、うちの屋敷で働きません? 給料はここの三倍は出しますわよ」

「恐れ入りますが、そのようなお誘いは受けておりません」



 今度はジェラルドが口説かれてる!

 配膳を助けないと!

 思わず自分もキッチンから飛び出して富裕層の女性客にスイーツを届けた。



「お待たせしました! プリンアラモードでございます」

「ありがとう、とても美味しそうね」

「ありがとうございます」


 俺だと誰も口説いて来ない! 流石俺!

 でもちょっと切ない!!



 三日間ほどこんな感じで、忙しくカフェで働いた。

 仕事終わりに店の入口前の黒板には材料が無くなったので来月まではお休みって書いた。

(開始時期おそらくは7〜10日以降)ともつけ加えた。


 アバウト過ぎるけど次は伯爵様の依頼でアレルギー対策の魔道具の為に錬金術師さんにも会わないといけないからな。

 まず花粉のプリントアウトと顕微鏡もあっちに行ったら仕入れるし。

 


 その日の夜。


「あー、やっと休みだわ」

「明日の朝から旅行だぞ、大丈夫か?」

「一晩寝れば回復するわ」

「ショータ、夕食は何だ?」


 俺はスーパーで買っておいたパック寿司が魔法の鞄にあるのを思い出した。


「俺は魔法の鞄に入れていたパック寿司を食うよ、でも生の魚が嫌なら別の、肉でも焼こうか?」


「ショータが平気なら俺も大丈夫だろう」

「私も食べてみるわ」

「じゃあパック寿司な、一応スティックパンも出しておくけど」


「はーい」

「ああ」


 

 俺は魔法の鞄からパック寿司と箸と醤油とお茶を取り出した。

 念の為に今回はワサビ無しだ。

 辛いとビックリするだろうから。



「ほらこれがパック寿司だ。本当は寿司屋……お店のもっといいやつを食わせてやりたいがこれですまんな。

 タイ、マグロ、サーモン、イカ、ハマチ、アナゴ、エビが入っているぞ」


「ふーん、どれが一番美味しいの?」

「俺はこのハマチとエビとマグロが好きだけど女性にはこのサーモンがやたらと人気だよ。値段が高いのはマグロだと思うけど」

「ふーん」


「とりあえず俺はエビをいっとくか」


 ジェラルドが俺の見様見真似で寿司に醤油をつけた。手でもいいのにちゃんと箸を使ってる。


「そうだな好きなものからいくといい、俺はハマチから」

「じゃあ私はサーモン。……うん、悪くないわね」

「やはりエビは安定だな」

「とりあえず二人共、生魚の刺身系も大丈夫みたいだな」


  

 俺はほっとした。

 パック寿司の後に二人はスティックパンも美味しそうに食べていた。


 翌朝。


 旅行に行くぞ! いざ海底都市へ!


 馬車と船を乗り継いで行くのだが、船着き場でジェラルドがおもむろに口を開いた。


「あー、実は俺はギルドに申請し、あらかじめこの船の護衛の仕事を請け負ってきた」

「おお! 用意周到! 流石エルフ! 賢い!」

「え、狡い!」


 ミレナがなんで誘ってくれなかったのかという剣幕だったのだが、


「狡くはない、補助に一人つくって書いて申請しといてやったからな」


 お!? これは珍しくミレナに親切!!



「え、じゃあ私にも護衛のお賃金入るの!?」

「やればそうなる」


「ミレナ! ほらジェラルドの親切にお礼を言わないと!」

「あ、あらかじめ申請するって言ってくれたらいいのに……でも、あ、ありがとう」


 やや照れくさそうに礼を言ったミレナだったが、


「まあ、別にお前の為じゃないからいいけどな」

「はあ? どういう事よ」

「ショータがお前を気にして旅を楽しめないといけないからな」

「あ、そー」



 ミレナがやっぱりね! って背を向けてぶつくさ言った。

 ジェラルドがツンデレのようにも見えるがなんなんだろうな?


 マジで俺の為に? 

 ほんとに俺には優しくて親切だなぁ。


「もうじき船が出ますので乗り込んでください!」


 船乗りが船着き場で声を張り上げていて、俺達もあれに乗るので船に向かって走った。



「船の護衛の方は腕にこのリボンをつけてください! 目印です!」


 船乗りが甲板で護衛相手に赤いリボンを配っていた。

 ジェラルドとミレナが貰いに行って戻ってきたが、


「しまったわ! 自分では片手で結べないんだけど」


 ミレナがチラッと俺を見てそんな事を言ってくる。

 なんとわざとらしいアピールか。



「係の人に結んでもらえなかったのか、仕方ないな、じゃあ俺が」

「うん」


 俺は赤いリボンをミレナの腕に肩の近くの左腕に結んでやった。


「ショータ、俺のも頼む」

「いいよ」


 ジェラルドも結んで貰わずにリボンだけ受け取ってしまったらしい。


 そんな訳でジェラルドのリボンも俺が腕に結んであげた。

 ミレナがはあ? みたいな顔をしてたがお前も同じ状況だったろ。



「マスター私も」



 いつの間にかトートバッグから出ていたミラ。

 この子には髪飾り用にリボンを数本あげてたんだけど、それをポケットに入れてたらしく、ビンクのリボンを俺の前に小さな手で差し出してきた。



「うん? ミラは船の護衛のお賃金出ないけどこのリボンを結んでほしいのか?」

「はい」

「腕にか?」

「どこでもいいです」

「じゃあ髪にしよう、かわいいから」

「はい」


 護衛と同じように腕に結ぶんじゃないなら、たんに俺にリボンを結んでもらいたかっただけか、かわいいな。


 しばしほのぼのとした後ではっと我に返った。


「なあジェラルド、この船旅にわざわざ冒険者の護衛がつくなら何かそれなりの危険があるって事かな?」

「海賊か海の魔物かな」


 マジで!?


「そんな危険なのか?」


 ヤバい、ドキドキしてきた。


「特に何もない時もあるが万が一に備えてあるんだよ」

「そうだよな、備えは大事だもんな!」



 何にもない時もあると聞いて俺は少し安堵した。

























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