第47話 鮫と流星
船旅には特に何事も無いこともある。
などど油断してると起こるものだな、事件は。
「グレートシャークだ!」
「あの巨体で体当たりされたら船が壊れる! 冒険者の皆様お願いします!」
とても大きなサメの魔物が四体くらい近寄って来ているらしい!
確かに黒い背びれが四つ見えてる!
「ああ!」
「承知」
「おう!」
用心棒の赤いリボンを腕にくくった冒険者者達が威勢よく返事をした。
するとジェラルドが声を上げた。
「俺は鮫を弓で狙うが、誰か風魔法でサポートは可能か!?」
「はい! 私は風魔法使いです!」
女性の魔法使いが手を上げた。
彼女がジェラルドと協力して水中の魔物に矢が届くようにするみたいだ。
一方ミレナは暗器のような物を構えていた。
飛び道具なんだろう。
ジェラルドの他にも弓使いと、銛を、構える者がいた。
剣士は剣を抜いて構えてる。
「構え! 放て!」
リーダーっぽい人の号令で一斉射!
矢と銛と暗器が風魔法のサポートで海中の水の抵抗をものともせずに、鮫に突き刺さった!
魔物の紫色の血が海面を染めた。
「やった! 命中!」
「くたばれ! 鮫ども!」
「やつら沈んでいくぞ」
「勝った! 撃退したぞ!」
「やりましたね!」
「ええ、風魔法の貴女、ナイスサポートだったわ」
「ありがとうございます! 狐族のお嬢さん!」
六人の用心棒冒険者達が状況報告や歓声を上げた。
傷が浅かった鮫も負傷したので深く沈んで逃げていったようだった。
セーフ!! 俺達は生き延びた!
しかしミレナが風魔法の女子のサポートを褒めていたのは意外だったな。
ちゃんと手柄を褒めるんだな。
なのにギルメンの女子達に爪弾きにされたのは普段の口が悪いせいなのか近くにいる男が色恋に狂うからギスギスするのか。
なんにせよ、誰も怪我なく済んでよかった。
ちなみにミラは回復途中なんだから、じっとしてろと言い聞かせてあった。
「無事に撃退したようですね、マスター」
「ああ、だからまだ寝てなさい」
俺はミラを抱っこして甲板に座り込んだ。
「あ、今のうちに間食でも用意するか」
魔法の鞄から食品用のトレイとローストビーフとレタスのサンドを取り出した。
バケットに挟んであって見た目がオシャレだ。
飲み物は何が良いかな、夏だし爽やかなレモン水でいいか。
ジェラルドとミレナが俺の側に戻って来た。
「二人共、お疲れ! これ食べるか?」
「食べるわ、もうお昼くらいでしょ」
「そうだな」
「美味しいわ」
「まだパンが焼きたての温かさを保っているからな、香ばしい。薄い肉もいい味だ」
流石の魔法の鞄効果だよなぁ。
「ポテトサラダもあるぞ、このロールパンに挟んでもいい」
「いただこう」
「ねぇ、ショータ、これ玉ねぎ入れた?」
「入れたぞ、ピリッとしてて美味しいアクセントになるから」
実は以前もポテトサラダは二回は食べさせた記憶がある。
「よかった、前にショータに貰って食べた時、玉ねぎが入ってる時とない時でだいぶ味に差があったから」
「つまり玉ねぎ入りの方が美味しかったんだな」
ミレナは頷いた。
「玉ねぎが安く大量にある時は入れるようにするよ」
「ええ」
────ところで、チラチラと他の人が俺達の食事風景を見てる気がする。
ローストビーフサンドが目立ってるのか、はたまたジェラルドとミレナの美貌のせいか。
今回はカレーみたいに強い匂いはさせてないと思うけどな。
ぐうう!
と、お腹が鳴る音が周囲から聞こえた。
見れば女魔法使いのあの子が真っ赤になってる。
あ、お腹が空いてるのか、食べ物を持ってきてないのか?
俺はミラにローストビーフサンドを紙に包んで渡し、お願いしてみた。
「あの魔法使いのおねーさんに先程は仲間の二人の為に風魔法の手助けをありがとうございました、これはお礼ですって言って渡して来てくれないか?」
「はい」
ミラはローストビーフサンドを持って女魔法使いの元に歩いて行った。
先程の俺の言ったセリフを忠実に言うと、魔法使いは膝をついて、小さなドールのミラからパンを受け取った。
魔法使いがこちらを見てペコリと頭を下げた。
「ショータはすぐ女性を見たら優しくするんだから、こないだは老婆だったけど」
「ショータは優しいからな」
「全ての人の分はないけどな。あの子は実際二人の役に立ってたし」
甲板では硬そうなパンや干し肉を齧ってる人が多かった。
まあ、日持ちする安全な食べ物となればそうなるか。
特に夏だしなぁ。
空を見上げた。青い空と白い入道雲。
美しい。
鮫以降は特に何事もなく船は進んだ。
海は荒れ狂う事もなく、ほぼ凪いでいた。
途中、夜に船乗りが、今夜は流星群が見れるだろうと言っていた。
マジで!? 撮影チャンス!
夜中に空を見上げたら本当に流星群が見れた!
「わー、キレイだな! 最高に映える!」
俺はまずカメラで流星を撮り、それからジェラルドやミレナと一緒に流星も映るようにカメラで撮影した。
「あ、ちょいジェラルド、ミラを抱っこしてくれ! それも撮るから!」
「ショータが抱っこして俺がそれで撮影ってやつをすればいいんじゃないか?」
「俺は映えないと思うけどな」
「いいから」
ジェラルドはカメラを俺からもぎ取って構えた。
俺はミラを抱えながら訊いた。
「ジェラルドはカメラの使い方は分かるのか!?」
「ミラに聞いたから知ってる!」
い、いつの間に!
まあ、でもよかった、これも旅の記念だよな。
夜空の星が流れて散らばってしまうように、俺達もいつまで一緒にいられるかは分からないけど、今この輝きは確かにあったと、覚えていたいと思う。
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