第37話 仕入れとカロリーン嬢のお話
「はー、薬草サウナも気持ちよくて楽しかったな」
「たまにはいいな、ああいうのも」
俺達はプチ旅行から家に戻ってきていた。
次の満月まではタブレットでエロ漫画でも描くか。
仕入れの為には日本の通貨も沢山必要だし。
と、俺は部屋でしばらくエロ漫画を描き、ジェラルドとミレナはその間、冒険者の仕事のノルマをこなしに行った。
しかし二人の行き先は別のようだった。
仲があまり良くないので。
* *
数日経った。
カロリーン伯爵令嬢は既に魔道具鞄と敷布を貸してくださっている。
敷布には魔法陣が描かれていた。
ありがたい、これでソーラーパネルも入るだろう。
魔法の鞄の口はそこまででかくはないし。
眠り草の追加もミレナがくれたし、また友人にお茶にして飲めって郵送でもしておこう。
俺はまた満月に魔法の収納と共に、日本に戻った。
押し入れから這い出てすぐにスマホの充電をする。
しばらくすると、スマホのWi-Fiが自動的に繋がり、溜まっていた通知が沢山きた。
LIN◯からもメッセージが届いていた。
眠り草のお茶を飲ませた友人から感謝のメッセージだった。
今度は会いに行く代わりに乾燥したお茶を郵送で送ると返信する。
そして早速ポストや宅配ボックスに届いていた抗生物質や荷物を確保し、パソコンデスクの前でパソコンを立ち上げ、コスプレエロ画像集やファンタジー風背景素材集の売り上げもチェック。
コスプレ風エロ画像の方の売り上げがすごくいい。
総ダウンロード数、27,648
流石エロは強いな。エロ小説付きにしててよかった。
今回はレンタカーも借りてティッシュやトイレットペーパーを買い集める事にしよう。
スーパーやドラッグストアで魔法のカバンとかは他人に見える場所で使えないし、他にも買いたい人がいるだろうから同じ店ばかりで買い占めもできないし、車を使って数店舗ハシゴしなくては。
スーパーでも食い物とか色々仕入れないと、あ、デパートでレースや下着も。
いや、手芸店でレースそのものも買うのもいいかな、いや、レース買い込む男になるのは怖いわ、下着もなるべく通販にしよ。
レースや下着も通販サイトでカートに入れてポチッとな。
宅配ボックスはあるからなんとかなるだろ、多分。
風呂に入ってから、夜でも開いてるコンビニに行って食べ物とティッシュを買い、店の前にあるポストに封筒を投入。
眠り草を友人に送る為だ。
翌朝はレンタカーを借りて仕入れの買い物をした。
やたらとティッシュを買い集める変な男に見えてないといいが。
でも学生寮とか施設の管理人とかも買うんじゃないかな? 知らんけど。
学生と言えば、放課後と言える時間帯に学校の近くを車で通ったら、学生の奏でるブラスバンドの演奏が聞こえて懐かしく思った。
学生時代を懐かしく思いつつも、ソーラーパネルとかの大きな買い物も無事終えた。
* * *
〜【伯爵令嬢カロリーン視点】〜
伯爵たるお父様の執務室に呼び出された私。
「カロリーン、今月のお小遣い、いや品位維持費をもう使い切ったと執事から報告があったが」
「しかし、お父様、あれは必要な出費でした!」
「新しい武具か芸術品かドレスや宝石を買ったのか?」
私は伯爵令嬢だけど、騎士でもあるからいい武具には目がない。
でも、今回の出費は武具の類のせいではない。
「店と家の土地と色々な雑貨ですわ。どうしても近くに置きたい商人がいて、ブルジョワ街に店と土地を与えました」
「家と、土地!?」
「亜空間収納魔道具と下着も混じっていますが」
ふいに口元を抑えるお父様
「ふっ……くっ!」
どうやらくしゃみを中途半端に耐えている。
アレルギーもちなのよね、お父様は。
「くしゃみですか、これをどうぞ」
私は後ろに控えさせていた執事に合図をし、持たせていた例の店で買ったティッシュをお父様に一箱差し出した。
「な、なんだ? 随分薄い紙が箱から飛び出ているな?」
「どうぞ、お鼻をこれで拭いてください。
使ったら捨ててくださいね、ハンカチとは違うから洗いません。
ティッシュという極薄の使い捨て用の紙ものですわ」
私はお父様からくるりと背中を向けた。
おそらくは鼻をかんでるだろうから。
「お父様、鼻はちんしましたか?」
「あ、赤子のような言い方をするな。
しかしこれは柔らかくてとてもいいものだな、鼻の下が痛くならない」
「そうでしょう!? ありったけを買ってきたのですわ、うっかり他の令嬢を連れて行ったばかりに全部は無理でしたが」
「どこで作られてるのだ? もっと欲しいが」
お父様はすずっと鼻をすすったあと、さっと後ろを向いてまたお鼻をかんだ。
ティッシュの箱は抱えて離さない。
「異国ですから入手が困難ですの、ちなみに一箱銀貨三枚です」
「なんだ、これはそこまで高くはないな」
「まあ、でもこのようなものをたまに仕入れることができる商人がいたので、出資したのです」
「これは許さないわけにはいかんな。私もあと20箱は欲しい」
「20!? いくらアレルギー持ちのお父様でも多いですわ。私でさえ購入制限があったのですわよ」
「出資者なのにか?」
「このような箱ものは嵩張るでしょう?
運ぶ為の人手をやると言っても通路を渡れるのは自分のみと言いますし、つまりは渡り、迷い人ですわ」
「!? もしや勇者か聖女か!?」
「いいえ、普通の男ですわ、最初は料理人みたいな真似をしてましたの」
「なんだ、しかし異界と行き来出来るとは珍しい。普通は来たら帰れずらしいではないか」
「そうなんです、稀ですわ!
我々で保護しなくてはなりません! 他所の国の者に取られないように」
「はっ! そう言えば先日収納魔道具の高価な敷布のやつを借りていったのは、もしや」
「あれらの便利な品を多く仕入れて来て欲しかったので、その商人に貸します」
「えらく信用しているな」
「あのハイエルフが、心を許すくらいなら悪人ではないでしょう」
「高貴なエルフが……」
「それとこちらも」
私は更に小さな箱を手渡した。
「なんだ、お菓子か?」
「チョコレートの菓子ですわ、もう三箱は家族用にお土産分があったのですが、お母様が味見の後に返してくださらなかったので、これはお父様の分だとなんとか死守したのです」
「う、美味い! 濃厚! なんたる美味か」
「これも渡り人の商人が仕入れたものです」
「むう、護衛騎士をつけるべきかもしれん」
「あまり大袈裟なものは好まないようですので、それとなく治安維持隊には店の周辺を見回るようには言っておきます」
変な人間や魔物にも手を出せないようにしなくては。
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