第31話 トラブルとチラリズム
「俺の店と家は貴族街とブルジョワ区画の間あたりにあるらしい、お嬢様は本当は貴族街に入れたかったけど俺が平民だから平民の知り合いが貴族街では訪ねて来にくいだろうって物件を紹介した人が言ってくれたらしくて」
「細かい心使いができる紹介屋だな」
「まあブルジョワはお金持ちでもギリギリ平民で貴族ではないものね。たまにお金で没落貴族の爵位を買うとこもあるけど」
三人で雑談をしながら、ブルジョワ街の手前にある平民街の中を歩いた。
そんな駅馬車の停留所までの移動途中、騒ぎが起こった。
「ミレナ! 見つけたぞ! やっぱり俺にはお前が必要だ! 戻って来てくれ! 二人でパーティを組もう!」
突如冒険者風の男が一人現れた。
どうやらミレナの知り合いだな。
「なんであんたと二人でよ!
ふざけないで! そんな関係じゃなかったでしょ!」
「あれ、解散した前のパーティメンバーか? 女の土魔法使いのいる、また仲間に入れてくれるって?」
「話をよく聞いてた? 二人でって言ったわ。前の前のパーティのやつよ」
「あ、もっと前の方!」
「ミレナ! そいつがお前の新しい男か!?」
「は?」
「何言ってんのよ!」
「お前を誰にも渡さない!」
男が漫画かドラマのようなセリフを言った!
「なんかヤバそうなやつだな、目が血走ってて、やばげな葉っぱでもやってんのか?」
俺がそんなセリフを吐いてると、男は斜めがけした鞄から竹筒を二本出した。
竹筒で一体何を? まさか俺のみたいにエロ絵が飛び出て来たりはしないだろうが、
「くらえ!」
男が振りかぶる竹筒の中身が飛び出した!
「危ない!」
俺は咄嗟にミレナを自分の背中に庇った!
ピンク色のジュースが飛び出たと思ったら、
「なっ! ピンクスライムだあ!?」
ピンクスライムが俺の胸にひっついてる!
「ちょっと! あんたね!
街中にモンスター入れるなんて頭どうかしてるわ!」
「やめろぉ! おっさんのストリップなんて誰も彼も見たくないから!」
俺は自分の体の上でヌルヌル動くスライムに驚き慌てて叫んだ!
肉体的に死にはしないが、社会的には死ぬ!
「きゃーっ!」
やつは竹筒を二つ持ってた!
ミレナと無関係の近くにいた女性にもピンクスライムが襲いかかってる!
「お前なんで邪魔した! 俺の言う事をきかないなら嫁にいけない姿にして俺のものにしようと思ったのに!」
クズが! なんてこと考えてんだ!
「なんでもくそもねーよ!」
俺がやつにそう言い返した瞬間、
シュルン!!
ズバッ!!
トートバッグから糸が飛び出て、俺の体に張り付いてたピンクスライムの核を捉え、切り裂いて助けられた。
危うく人前でおっさんの裸体を晒すとこだった!
誰得なんですか!? やめてください!
ジェラルドはたまたま近くにいて被害にあった女性のスライムの核を短剣で破壊し、ミレナは急にダッシュして痴漢男の上半身に飛び蹴りを食らわせた!
「ぐあっ!!」
「……誰かこいつを衛兵に突き出しといて! 私達は忙しいから!」
「お、おう」
近くにいた、いかつい体型の男の人が了承してくれ、痴漢男は取り押さえらえた。
「ショータ、あなた……私を庇って……」
「お、おう、気にすんなミレナ」
「ふ、服溶かされて乳首付近だけ見えてる! ぷっ、アハハハ!」
ええ!?
あ、ほんとだ! 俺の乳首が白日の下に!
ぎゃーつ!!
「気にしろ! お前を庇ってこんな恥ずかしい姿になったのに!」
「ショータ、もういっそ上を脱いだ方がいい、乳首の付近だけ穴が空いてるとアレなやつだと思われる」
「スライムのせいだからな!」
「女性の方はスカートが少しやられたみたいね」
「本当だ、大胆スリットになってる!」
「見るんじゃないわよ」
自分はショートパンツを履いて太腿見えてるのに!
と、言いたいのを俺はこらえ、俺はトートバッグを一旦地面に置き、仕方なく上のシャツだけ脱いだ。
「ヒュー♪」
誰だよ!
男が上を脱いだだけで口笛拭いたやつは!
俺は周囲を見回すと、ガチムチでちょび髭のおっさんがこっちを見てた。ちょっと危ない目つきで。
俺は目をそらした。何あれ怖い。
一部が溶けた服を魔法の鞄にしまおうとすると、地面に置いたトートバッグの方から小さく声が聞こえた。
「マスターすみません……殺気も殺傷能力も無いスライムだったので反応が遅れました」
「いや、ミラは悪くないよ、ちょっと路地裏で着替えするわ」
俺は仕方なく人目を避けるように平民街の路地裏に入ったが、くっさ! 臭い!
俺は魔法の鞄から急いで着替えのシャツを取り出して着た。
ダッシュで路地裏を出た。
「ジェラルドォー! 路地裏やばい~」
色々ショックで思わず泣き言を言った。
「だから平民街の路地裏は臭いがやばいんだ」
「俺の家がブルジョワ街のあたりで良かったよー」
「何をエルフに甘えてるのよ」
ミレナがジト目で俺を見てくる。
「お前のせいでえらい目にあったのにそんな言い草ぁ」
「だからな、狐族の女はあのように男を無意識にも誑かすことがよくあり、関わると厄介な事件に巻き込まれる事が多い」
「そうだったのかぁ~」
魔性の女みたいだな。苦労は多そうだが。
なんだかんだでひと騒ぎあったが、俺達三人は貴族街とブルジョワ街の狭間付近に建つ店に来れた。
「はぁ、着いたぞ」
「わあ! 可愛い店ね!」
「なるほど、立派な店だな」
二人して感心してくれたが、俺は疲れた。
「ひとまず裏手にある家の方に行って休もう、俺には休息が必要だ」
「掃除に来たんじゃないの?」
「ちょっと休憩した後でもいいだろう。
お前もどうせあの調子ならまだパーティメンバーもいなくて暇だろうし」
「くっ! 本当の事だけど辛辣! 辛辣エルフ!」
相変わらずミレナには塩なジェラルドだった。
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