第25話 ヴェールテ伯爵邸で物売り


 俺はジェラルドに貰った地図を片手に荷馬車に揺られ、朝の十時くらいに伯爵邸の前に来た。

 流石伯爵邸、華麗な豪邸だ!



「何者だ? 平民が来るような所ではないぞ」

「あの、以前ラビ族の村にオークが来て、そこで伯爵令嬢に料理を振る舞った者なのですが、ぜひ見ていただきたい商品がありまして」

「あ! お前は!」 


 声を上げて庭園から現れたのは、なんとなく見覚えのある令嬢の護衛騎士だった!


「はい! ショータです! あの時の護衛騎士様でしたよね!?」

「そいつか、通してやれ」

「は、レナード卿がそうおっしゃるならば」



 わりとすんなり話は通った。

 応接間に通され、しばらく待っているとカロリーナ・フォン・ヴェールテ嬢が現れた。



「久しぶりね、料理人! 商人になったのかしら?」



 俺は百均で購入しておいた花柄のかわいい箱に下着や化粧品を詰めて、魔法の鞄に入れて来ていたのでそれを取り出す。



「なれたらいいなと思っていますが、とりあえずこれをご覧くださ……あ、ここで女性用の高級下着を出しても構いませんか?」


 男性の護衛騎士達がさっと後ろや他所を向いた。



「よくってよ」

「はい、これを」

「……まあ! なんて可愛い箱!! って、あ! なんて美しいレースかしら!」


 まず花柄のかわいい箱に驚き、次に中身のレースに驚く令嬢。


「上下セットの下着なのですが、どうぞお手に取ってご覧ください」



 令嬢は下着のレースをうっとりと眺めた。

 令嬢の胸のサイズを目視でFカップだと予想し、買ってきたものだ。


 下の方はゴムなので伸びますと説明すると令嬢は両手で左右にビヨンと引っ張った。



「まあ! 紐じゃないのね! 驚きの伸縮性だわ!」

「特殊な技術と素材で作られた最高の下着にございます」

「いただくわ」


「一応色やデザイン違いでサイズもいくつか用意があるのですが、試着してみなくて大丈夫ですか?」

「全部買うわ」

「下はともかく胸がキツイのもあると思いますが」

「入らないのは侍女にでも下げ渡すから大丈夫よ」


「かしこまりました」


 下着も下げ渡すのか!

 まあ、ほぼ新品のまま洗えばいいのかな?


「支払いを」  


 令嬢は側に控えてる侍女を呼んだ。

 金貨の入ってそうな箱を持って来た。



「あの、お嬢様、石鹸や化粧品もございますが」

「早く言いなさいよ!」


「申し訳ありません。こちらは宝石のように美しい石鹸です。名前も宝石石鹸で、こちらは美しい花びらを入れて作られた飾りにもなるいい香りのする石鹸です」


「まあ、どちらもなんて美しいのかしら、私にピッタリ、買うわ」


「ありがとうございます、そして化粧品の方ですが、こちらの乳液はお肌に潤いを与えますし、この化粧水は白く美しい美肌にしてくれて、肌荒れ防止成分も入っており、この口紅は大変発色も良く安全であり……」



「まあ、どれも素敵ね! 買うわ!」


 石鹸や化粧品も売り込んでみたらやはりいい値段で物が売れた!

 流石高位貴族は金払いがいいな!

 金貨の沢山入った袋を貰って俺はホクホク。


「お買い上げまことにありございました。

ここらで当方がお礼にお持ちしたケーキでもいかがですか?」


「出してみなさい」


 俺は下着や化粧品を片付けられたテーブルに魔法の鞄からケーキの箱を取り出した。


「こちらはフルーツたっぷりのタルトケーキでございます」

「まあ! 美しいこと!」


 やはりタルトは女性ウケする!


「そしてレアチーズケーキとガトーショコラといちごのショートケーキでございます」

「ああ……どれも美味しそうだわ」


 お嬢様はうっとりとため息をついた。


「お嬢様、毒見を」


 メイドがそう申し出たが、令嬢はゆるさなかった。


「お父様が先日オークションで落札した鑑定鏡を借りてきて!」

「は、はい、かしこまりました!」


 メイドが高そうな宝箱を持って来て、中には片方の目だけにかけるモノクルが入っていた。


「これで毒の有無がわかるわ」

「それは便利ですね」 


 お嬢様はふふふと笑って鑑定鏡という眼鏡を一瞬かけた。

 

「よし、毒はないわ」


 メイドがほっとしつつも少しがっかりした顔をした。

 毒見など命がけの仕事だろうにわざわざやりたいのか?

 そんなにスイーツの魅力が凄いのかな。


 そして令嬢はタルトは美味しく完食したが、他は一度に食べ終わるのがもったいないという理由で半分ずつスイーツを食べた。



「どれもなんて美味しのかしら!? 特にこのチョコレートケーキの濃厚な味ときたら、絶品ね! どこのパティシエ作なの!?」

「ここよりずっと遠くの者でして、また入手できたら持ってきます」

「むう、引き抜きは無理なのね」

「申し訳ありません」



 またケーキも絶対に持って来なさいと、令嬢は追い金貨をくれた!


 こうして俺はその日、伯爵邸でがっぽり稼いで帰った。


 そして次の満月まで俺はエロ絵を描いて売るを繰り返して日々を過ごすことにした。


 エロ絵をせっせと売ったおかげでなかなか金も溜まったので、上級ポーションも買えた。


 そういや眠り草のお茶は自分で試したが、特に問題もなく、ぐっすり寝て起きる事ができた。

 安全確認良し!!


 眠り草のお茶も日本に戻ったら不眠症の友人に振る舞ってやらないと。



 それと前回実家に帰ってクローゼットのドールを引き取ってくるのを忘れてたのを思い出したので、今回は忘れないようにしないと。


 そしてついに満月の日の夜が来たので、日本に帰った。







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