第8話 夏の森で
食事を終えて花街に向かった。
色を塗った肖像画を納品しに。
出来栄えに嬢も店主も満足してくれたんで、わりといい値段で報酬の金を貰えた。
昼に食堂でお安い豆のスープと硬いパンを食いつつ雑談。
エロ絵を売るのにポスター入れの
え? いいの? マジでそんな暇あんの?
そもそもジェラルドはなんの仕事をしているのか?
もしや長生きだから資産があってスローライフをしてるのかな。
やっぱり森で狩や食材収集しながら生きてるみたいな。
なんにせよ、ぼっちより心強いから良かった。
* *
荷馬車をヒッチハイクで乗り継いで夏の森に到着した。
俺達の他に冒険者風の人達いた。
「冒険者がいるけど、もしかしてここ、危険な魔物とかいる?」
「森にはなんかしらいるさ、今更気にしてもしょうがない。俺の家の付近にだっているし、結界で危険な魔物は家には入れないだけで」
やっぱり魔物がいるんだ! ジェラルドはいつの間にか弓を装備してる。
「俺、こんな装備で大丈夫か?」
サバイバルナイフくらいはあるけど、盾も薬草も毒消し草もない、心許ない。
「俺が守ってやるよ」
「あ、ありがとう」
ジェラルドが見た目通りにイケメンなセリフを言った。
すげえ! 俺が女なら惚れてる! やべえ!
俺は思わずRPG脳で訊いてみた。
「怪我した時の薬草とか毒消し草とかある?」
「常備してあるよ、でもこの夏の森のどこかにも多分あるから、見つけたら教えるよ」
「さすがエルフ! 準備がいいし、物知りだな!」
森のエキスパートは流石だぜ。
俺はジェラルドど夏の森に入った。暑い。半袖になりたい。
パーカーだけは脱いでリュックに入れた。
でもヒルとか虫がいそうだから、パーカーの下の薄手のラグランシャツは着ておく。
いや虫は絶対いるわ。
すでにその辺に蟻も地面で蠢いてるし、カミキリムシやカナブンっぽいのも木に張り付いてるのが見てとれる。キモイ。
急にジェラルドが矢をつがえたと思ったら、何かを狙って放った。
命中したらしくバサッと落ちた。
キジに似た何かの鳥だった。
食材ゲットだぜ。次にジェラルドは猿も二匹獲って亜空間収納付きの魔法の鞄に入れたんだが、
「猿も食うの?」
「食う人がいるから猿は売る。俺達はさっき獲った鳥を食おう」
良かった! 猿食うのかと思った! 流石に猿食はちょっと怖い。
「あったぞ、バンブー」
「おお! 沢山ある!」
ジェラルドが魔法の鞄からノコギリとナタを出して、ノコギリを俺に貸してくれた。
エルフはナタを使って手際よく竹を倒していく。
一撃で。なかなか腕力あるな、このエルフ。
俺も頑張って竹を二十本程切った。長いままだと不便なのでスケッチブックの紙と同じくらいの長さで切った。
いくつかは水筒にもできる。
竹はジェラルドが魔法の鞄にしまってくれた。ありがたい。
「その魔法の鞄って買えるもの? 買えるとしたらいくらくらい? やっぱり高い?」
「魔法道具屋にあるよ。あまり入らないやつなら金貨三枚くらい有れば買える」
「あまり入らないやつでも金貨か。頑張って稼ごう」
日差しの強い開けた川の側でソーラーパワーでスマホの充電をしつつ、鳥の羽をむしって簡易カマドで網に乗せて焼いて、俺の持って来たスペシャルなスパイスをふりかけ、焼き鳥にして食った。
美味しい。鶏より少し味が濃く、ジューシーだった。
食後に竹の中の節の部分を貫通させておく。道具はジェラルドの鞄から出てきた。
すごい、某猫型ロボットのように色々出て来る、便利だ。
ずっとそばにいてほしい!
でも多分ずっとは無理だな。いつまでも甘えるわけにはいかん。
せめて俺が嫁になれるであろう女エルフであれば可能性もあったが、人間の男だし。
一人立ちできるまでのサービス期間だろう。
今の俺は大人の迷子みたいなものだし。
──でも、今、一人じゃなくて本当に良かったと、しみじみ思った。
「あ、ショータ、そこに薬草があるぞ」
ジェラルドの指差した先、木の側の日陰にそれは生えていた。
「マジ? これ? よもぎに似てる植物だけどこれ?」
「そう。怪我した時に使える」
早速採取していく。
その後はワサビの葉に似た毒消し草も見つけて教えてくれたのでそれも採取したし、パパイヤみたいなのやクリーム色の小さな丸い実が木にわさわさと実っているのも見かけたし、何とパイナップルとバナナの木もあった!
南国フルーツ系のバナナや木の実もいっぱい採れた。ラッキー!!
虫さえいなきゃここでは食べ物に困らないから住める気がした。
竹で住居を作れば。
絵の仕事が上手くいかなかったらここに来る手もあるなと思った。
そして帰り道に違う道を通ったら、また食材を発見!
「あ、ニラっぽいの生えてる。やっぱりニラだ」
俺はニラを見つけて匂いを嗅いでみた。これはスイセンの花でなくニラの香り!
「あっちの方にはジンジャーが生えてるぞ」
生姜だ! 生姜焼きが作れる! 喜んで生姜を収穫していたら、急にジェラルドが弓を構えた。オーラすら纏っている。
突如現れたのは猪系の魔物だった!
ジェラルドの放った矢は猪の眉間に刺さった。
「こいつはワイルドボアだ。これも食材になる」
「おお、ジェラルドお見事」
木に吊るして二人で大きな猪を解体していく。猪の解体は昔、動画サイトで見ていた。
実際にやるのは初めてだったが、ジェラルドが丁寧に教えてくれる。
最後に残滓たる内臓に穴を開けて土に埋める。
穴を開ける理由は腐敗が進むとガスが溜まって爆発しないようにだ。
俺はこの猪肉で生姜焼きが作れるなと思った。
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