第7話 狐

 死体安置所でお嬢様、奇跡の復活!


 そんで執事さんからはお嬢様の捜索に手を貸してくれたから後日御礼をと言われたけど、たいした事はしてないと俺達は辞退した。

 

 騎士に凄まれながらこの件は秘密にしてくれと頼まれて、騎士とお嬢様と執事さんは去っていった


 お幸せに。


 それから俺は肖像画を仕上げる為に、ジェラルドの木の家へ戻った。


 水彩絵の具と顔彩を少し持って来ていた。

 スマホ内の写真を見ながら仕上げていった。


 さて、納品に行く前に無料食材を探しにジェラルドと二人で森へ行き、変な物を見つけた。


 壁尻!

 こんな所にカチコチのコンクリートみたいな壁と、むちむちした尻が生えてる。

 エッロ!!

 尻からは狐系の尻尾が生えてるけど、人間に似た下半身が見えてるから、きっと獣人の女の子だ。


「何故こんなとこにエッチなイタズラをしてくださいと言わんばかりの壁尻が!?」  


 俺は驚きつつ、ふわふわの尻尾に釘付けになった。モフモフしたい!


「た、助けて!」

「ショータ、あまりにも不自然だ、罠かもしれない」


 警戒するジェラルド。さもありなん。


「え、あ、触ったらセクハラ、いや、言いがかりで訴えられるとか!?」


 危ねぇ!


「違う! 助けて! 罠じゃないったら!」


「罠じゃないならどうすれば森の中で突如として生えてきたみたいな壁にハマってるんだ? 戦闘が起きたならトドメさされてないのもおかしい」


「あ、もしや殺しは嫌だけと動きは封じたかったとかじゃないか? 慈悲の心!」


 俺の推理にジェラルドは、


「じゃあどこぞの土魔法使いが盗人へのお仕置きをしたとかじゃないのか?」


 冷静に考察してた。


「違う!! 盗んでなんてない! ただ元冒険者仲間の土魔法使いの女の好きな男が勝手に私に言い寄って来て、色目使って奪ったとか誤解して! あの女が私をこんな目に!」


 もしや狐ちゃんはサークルクラッシャーの姫的な存在かな?


「あー、土魔法の壁にハマってるんだこれ、壁尻状態で」  


 謎はすべて解けた!!


「分かったら早く助けて! おトイレ行きたい! 体触っていいから!」


「じゃあ押すのと引っ張るのとどっちがいいのかな? あ、俺みたいなおじさんに触られるよりイケメンのエルフの方がいいのでは?」


「尻がつっかえてるなら、引いた方がいいかもしれんが、俺は衝撃で漏らされたら困る」 


 クール!!


「漏らさないから! どっちでもいいから助けて!」


 ジェラルドは怪しい狐っ子を警戒して、触ろうとしないから、俺がやるしかないので、早速手を伸ばした。


 いざ、モフモフ! 尻尾が柔らかい!


「きゃあ! ちょっと! 今、尻尾は関係ないでしょ!」

「すまない、つい! 触っていいって言ったから!」

「早く! 漏れる!」

「ほら、こいつやっぱり漏れるって」

「違う!! 我慢する!」


 狐ちゃんが慌てて騒ぎ立てる。

 俺も慌てて腰をつかんで引っ張った!


「あいたたた!」

「ごめん!」

「どうやら胸がつっかえてるな」


 壁の反対側に回ったジェラルドが現状を実況してくれてる。


「ジェラルドどうする!? なんかぬるぬるした石鹸とか潤滑油とか使うべきか!?」


「あ、ちょうどそこにスライムがいるぞ」

「スライムって潤滑油代わりになるのか!? 襲われないのか!?」

「あのピンクスライムは服だけ溶かすし、別名ローションスライムと言われている」

「なんだそのスケベな存在は!? でも服が溶けるのはやばいのでは?」


 素っ裸になったりしないか!?



「無理に引っ張って乳房が千切れるより良いのでは?」 


 ジェラルドはクールに言った。


「ひぃ! 千切れるのは嫌! 服が溶けるスライムでもいいから助けて!」


 ジェラルドがピンクスライムを蹴り上げて上半身のある方の壁にべちゃっと叩きつけた。


 わ、ワイルドぉ。

 

「ピンクスライムが仕事を始めたぞ」


 ジェラルドの実況によればどうやら、うぞうぞと、スライムが蠢いているらしい。


「ヒイィィィ!」


 たまらず悲鳴を上げる狐ちゃん。

 可哀想だが、それ、潤滑油かわりだし。


「服が溶けてきたから、そろそろひっぱってみたらどうだ?」

「じゃあそっち側は胸が丸見えってことか!?」

「ニァァァ!!」


 羞恥の為か、猫のように叫ぶ狐ちゃん。


「狐なのにニャアとはな、ちょうど長い髪の毛で隠れてるから安心しろ」


 そ、そうなんだ。

 それにしてもクールだな、ジェラルド。

 同じエルフの女にしか興奮しないのかな?


「引っ張るぞ!」

「うニャアァァァ!」


 猫みたいに叫ぶ狐ちゃん。


 俺は足と手に力を入れて尻側を引っ張った!

 すると、その時ずるんっと、

 

「抜けたぁ!」

「あああっ」 

 


 へたり込む狐ちゃん。

 両腕で胸を隠し、ぷるぷる震えてる。



「じゃ、俺達はこれで」

「え、あの、ジェラルド、あの子ほっといていいのか?」

「漏らしそうだと言ってたじゃないか」

「あの、じゃあせめて上着とか、これ! 今度この辺の木の家まで返しに来てくれると助かる!」



 俺は仕方なく一張羅の自分のジャケットを狐ちゃんの肩にかけて貸し、ジェラルドとその場を立ち去った。


 今は着替えがあまりないからかっこよくあげると言えなくて辛い。


 俺達は森の中でキクラゲと木苺を摘んでから、家に戻った。


 さっき収穫したキクラゲとジェラルドが持っていたストック野菜の人参とキャベツを俺が日本から持ってきたちゃんぽんスープに入れて食べた。

 デザートは木苺で、全部美味しかった。


 ちゃんぽん麺があればもっと良かったが、リュックの容量にも限界があるから、麺は諦めて持ってきてなかった。







































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