第48話 新世代の目的

「委員会は何と?」

男はファン・ソーメレンにそう訊いた。


「ただの警告さ」

ファン・ソーメレンは素気なくそう言った。


「第一第二世代は?」

やはりそこが気がかりなのだろう。


「今は考えてもしょうがない」

ファン・ソーメレンは肩をすくめてそう答えた。


委員会と第一第二世代の盟約は誰でも知っているが、もし本当に「ホモ・サピエンスへの攻撃ないしは支配を目論む者」が現れた時、第一第二世代が具体的になにをどうするかは誰も知らないのだ。


「まさかソドムの炎でもあるまいし」

ファン・ソーメレンはそう言って片側の口角だけ釣り上げて笑った。


「まあ攻撃も支配もするつもりではないしな」

男はそう言ってワインを一口飲んだ。実際彼らの目的はホモ・サピエンスの支配ではなかった。管理である。猿山に登ってボスになりたがる飼育員など存在しない。


「そのうち委員会も上の世代も判ってくれるさ」

ファン・ソーメレンはうそぶくでもなくそう言った。


口にこそ出さなかったが、彼らは、第一第二世代のホモ・サピエンスへの支援方法に大きな疑問を持っていた。あの世代がやっていたのは幼児に無制限にプレゼントを買い与えているだけであり、それは自制心の欠如に繋がる。その結果が現在のこの世界だとすれば本末転倒ではないか、と思っている。


今どきの動物園は動物が簡単には餌を取れないようにするという。それと同じようにホモ・サピエンスを刺激し、誰もが諦めた更なる進化を促すのが彼らの目的である。そのための地盤として経済面の拡充を進めているだけであった。

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