第39話 明日の予定は?
思ったよりは気楽そうなレストランだった。周りのお客も結構ラフな格好をしているし、半ズボンの男性も居た。和樹は一応それなりっぽいサマージャケットを羽織っていたが、シャツやスラックスは相変わらずのムジクロだった。
「飲み物は何にする?」
和樹は席につくとそう訊いてきた。悠里は久々にスプリッツァーが飲みたかった。
「お酒だよ?」
和樹は眉を上げて確認した。
「たまにはそういうの飲みたい」
悠里は夜遊びをしてた頃に多少はお酒を飲んだ事がある。いろいろ飲んでみたが一番無難でどこでもさほど変わらないのがスプリッツァーだった。
和樹はスパークリングワインのハーフボトルをオーダーした。飲み物が運ばれてくるとグラスを合わせて乾杯し、とりあえず一口飲んだ。
「……おいし!」
悠里が正直に言うと和樹はちょっと笑った。
「ペリエで割ってるからね」
それにワインも上等なものなのだろう。さすがの高級ホテルだ。
オードブルが運ばれてきたので二人で食べ始めた。それまで悠里はあまり自覚していなかったがかなり空腹だったらしい。一口食べると食欲が刺激された。
「美味しいおいしい」
さすが女子高生である。食べる時はしっかり食べる。
「ところで用事は済んだの?」
悠里はふと思い出して訊いてみた。
「明後日の昼に会いに行く。今日はアポ確認しただけ」
和樹もオードブルをつまみながそう言った。
「どこ行くの?」
そういえば聞いてなかった。
「証券取引所」
意外な行き先に悠里ちょっと意外に思ったが、前に株式情報がどうのと言ってたのを思い出したのでそれ以上はあまり深く考えなかった。
「遅くても夕方前には帰ってくるよ」
そうしたら外に食べに行こう、と和樹は言った。
「明日は?」
悠里が訊くと和樹はちょっと広角を上げて笑った。
「この旅行の目的を忘れたの?」
和樹はちょっとにやけた顔でそう言った。悠里はどきりとした。
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