第37話 運の悪い男
「その後、ネザーランドで系統不明の庶子が確認されて調査した結果」
当時のレオン・マルロー、現在の兵藤和樹の系統だと認定されたとの事だ。
「……なんとまあ……」
和樹はなんと言っていいか判らなかった。
「最後の最後で置き土産になっちゃったね」
エリーズはにやりと笑ってそう言った。和樹は口をへの字にするだけだった。
当時のレオンはその事件でヨーロッパにうんざりした。またさほど珍しい事ではないが、レオンはあまり子宝に恵まれなかったので、子孫繁栄のために新天地を求めて海を渡ったのである。極東には二百年近くも戦争が起きていない不思議な軍事政権があるというので、生活の安定も考えてその島国に移住したのだ。そうしたら──
「パパいろいろついてないよね」
エリーズはさすがにちょっと同情気味に笑った。移住して生活基盤を作ったと思ったらまたも内乱が勃発した。それどころか政体まで変わって戦争、戦争、また戦争である。しかも最後の戦争で新型爆弾まで落とされて国家滅亡の危機に瀕したのだ。
「本当にねえ……」
和樹は口をへの字にしたままそう言った。死ねって事かなこれ?
「でもかわいい彼女ができたんでしょ?」
エリーズは和樹を慰めるようにそう言った。
「ああ、今一緒に来てるよ」
考えてみると悠里はエリーズの義理の母親という事になるのかな?いやまだ結婚してないから違うか。などとアホな事を考える和樹だった。
「会ってみたいな」
エリーズも呑気な事を言った。
「そのうちにね」
和樹ははぐらかした。16歳になったばかりの悠里にエリーズを会わしたらどんな誤解をされるか判らない。娘とも言いたくないし言っても信じなさそうだし。
「エリーズは?」
父というより友人という感じで訊いた。
「ボーイフレンドは多いけどね」
エリーズは微苦笑を浮かべてそう言った。まあ生まれて六百年以上も経つ娘の恋愛に口を出すつもりはない。孫ができたら教えておくれ。
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