七章 はるばる来たぜオランダ
第33話 ほんとに来た
「はい、というわけで、今日はなんと!オランダにやってまいりましたー」
和樹は相変わらずの無表情でそう言った。
「わーぱちぱちぱちー」
悠里も相変わらず口でそう言うだけで拍手はしなかった。
悠里はこの2週間の事を思い返してもよく判らなかった。まずパスポートを申請して、和樹と一緒にスーツケースとセキュリティバッグを買い、服や化粧品や日本食などの当然考えつくものから、SIMカードだのプラグだのちょっと調べないと用意できないものも揃え、あれよあれよとばたばたしてたら羽田空港から出発して、ドイツのミュンヘンで一回飛行機を乗り継いで、今ここオランダに居るのだ。
「……本当に来てしまった……」
悠里はここ──スキポール空港を見渡して呆然とそう言った。
「まあとりあえずホテルに行こう」
和樹は軽くそう言った。もちろん別室だがどちらもダブルルームを予約したという。つまりその気になればどちらででもアンナコトやソンナコトになるのである。
「……うん……」
もはや悠里は和樹とアンナコトやソンナコトになるのにためらいはないが、この突然の海外旅行で心が宙に浮いてしまっていた。もうとりあえず寝たい。
「ホテルに着いたら少し休むといいよ」
和樹は優しくそう言ってくれた。
「そうする」
悠里はとにかく落ち着きたかった。
タクシーでホテルに着くとこれまたお高そうなホテルだったが、今の悠里にはそれをツッコむ気力がなかった。もうどうにでもしやがれ。
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