第29話 夏休みの計画

昼休みにいつものビオトープに行くと和樹が何かを読んでいた。珍しい。仕事かな?


「珍しいね仕事?」

悠里は覗き込んだがなんと日本語ではなかった。


「なにこれ?」

悠里は優等生なので多少は英語も読めるが、これはどうも英語じゃないぽい。


「いやまあ違うというかそうというか」

和樹はそんな事を言った。


「うーんわからないなあ」

和樹がそう言うと悠里は笑い出した。


和樹がわからないと言ったのは、ユーロフューチャー・アムステルダムの最高経営責任者であるヘルト・ファン・ソーメレンという人物が誰の系統の孫だか判らない、という意味なのだが、もちろん悠里はその文書そのものが読めないのだと思ったのだ。


「まあお昼にしよ」

どちらからともなくそう言ってお昼ごはんの時間が始まった。話は相変わらずの雑談だが少し雰囲気が変わった。教師と生徒から恋人同士に移行しつつあるのだ。


「にしても和樹自身はあまり高い服着てないよね」

悠里はふと気が付いてそう言った。


「ムジクロはすばらしいメーカーだからね」

和樹は毎度のあっさりとした口調で言った。


「服なんて上着さえなんとかすれば後はどうとでもなるし」

なんかビンボー臭いことをいう和樹であった。


「彼氏がムジクロで彼女がブランドで固めるのね。いいよねそういうの」

悠里は呆れたようにそう皮肉った。和樹を彼氏と認めてやる、という意味でもある。


「……まあ、ドレスコードのあるお店いくときはそれなりには……」

和樹は返答に困ったようにそう言った。


「冗談じょーだん」

悠里は笑ってそう言った。


「ところでそろそろ夏休みなわけですが」

悠里はちょっと表情を改めてそう言った。


「一度アニバに行きたいなと思うわけであります」

アニバーサル・スタジオ・ジャパンは大阪にあるテーマパークである。ちょっと遠いが、つまりそれは泊まりを前提としているわけで、つまりそういう意味である。


「アニバもいいけどエフテリングなんてどう?」

和樹はちょっとからかうような顔でそう言った。

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