六章 お泊りデート計画
第28話 静かな幸福
悠里は目覚めるとまず洗面台へ行って顔を洗って手を洗って歯を磨いて化粧水をつけた。次は台所に行ってお弁当の用意だ。冷蔵庫に入っているおかずを取り出して弁当箱にご飯と一緒に詰めてハイ出来上がり。
それが終わればパンを焼いて目玉焼きを焼いて適当なサラダを作っての毎朝ほぼ同じ朝食の準備である。コーヒーはドリップ式のインスタントだ。食べ終わったら制服に着替えて鞄に教科書やノートとお弁当を詰める。もう一度歯を磨いて小さく行ってきますと言って家を出た。
バスで駅に向かい電車に乗る。毎朝の混雑なので一番前の女性専用車両に乗り込む。これは痴漢を避けるというより面倒を避けるための行動だったが、最近では本当に痴漢避けの意識でそうしている。知らない男になんて絶対身体を触られたくなかった。
起きてからここまでの間、悠里はほとんど何も考えていなかった。呆然としているわけではない。むしろ逆に世界の全てがクリアになったような気がしている。つまり考えたり悩んだりする必要がないように感じているのだ。
一瞬、昨日和樹とキスした事が頭をよぎったが、それも別に恥ずかしくもなかった。むしろなぜ今までしなかったのか不思議なくらい当然の事に思えた。
──私は和樹とするんだろうなあ
そんな事を考えたがもはや全然恥ずかしくなかった。ただ子供を産むというか、妊娠してお腹が大きくなるのはちょっとヤだなと思った。あとあれ、マタニティ・ブルーとかああいうのがあるらしいし。まあ私は生理そんな重くないし、たぶん大丈夫だとは思うんだけど──
兵藤の影響なのか、その前段階の、多くの少女にとって人生の一大イベントであるはずの初体験についてはすっぽり抜け落ちたまま、そんな事を考える悠里だった。
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