第25話 お次はドライブ

さて、食事もしたし買い物もした。夕方まではまだ少し時間があるので少しドライブでもしようという流れになった。


「ホテルとか行かないからね」

悠里はまたもそんな事を言った。


「そんなに何度もいうと逆にフラグかと思うよ」

和樹は少しからかうようにそう言った。


ばか、と返したが実は悠里もまんざらではない。前から感じていたが、和樹は居心地のいい男だった。燃えるような激情家ではなく、ゆっくりと温泉にでも浸かっているような温かみと開放感を感じる。


──この人とだったら

一瞬そんな事を思って慌てて首を振る悠里だった。ダメダメ早すぎる。


「どしたの?」

和樹は前を向きながらそう訊いてきた。


「なんでもない」

素っ気なくそう返す悠里だった。


しかし気持ちがよかった。彼氏未満の男と二人きりでドライブデートしているとは思えないほどゆったりとした時間である。速くもなく遅くもない和樹の運転に加えて、少し西に傾いた太陽が心地よく、ついうとうととしてしまう悠里であった。


気が付くと車は停車していた。少し、いや結構寝てしまったらしい。運転席に和樹はおらず、当たりを見渡すと波止場のようなところだった。


「お、起きた?」

車の外から和樹が声をかけてきた。


「ごめん寝てたみたい」

うんよく寝てたよ、と言って和樹は悠里に温かい紅茶を差し出してきた。


「ありがと」

受け取って蓋を開けて一口飲む。あーおいし。


「というわけでドライブデートの定番、海にやってまいりましたー」

と、和樹は海のほうに左腕を広げて平坦な口調で言った。


「わーぱちぱちぱちー」

と、口で言うだけで実際には拍手をしない悠里だった。ペットボトル持ってるし。


そうして二人は車を降りてそこらへんを少し散歩した。とはいえ夕方の海なので風が強く少し寒い。まあとりあえず海に来たし、という事ですぐに車に戻る二人だった。

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