第24話 乙女が課す試練
喫茶店で少しゆっくりして、昼食のために別のレストランに入った。これまた和樹は最初お高そうな鮨屋を指さしたが、悠里は和樹の腕を引っ張ってチェーン店のイタリアンレストランに入っていった。
「成金かっつの」
レストランの席に座ってそう言う悠里だった。
「いつも弁当なのにどういう金銭感覚してんのよ」
悠里は呆れてそう言った。
「そりゃ好きな娘の前ではカッコつけたいし」
またもあっさりとそんな事を言う和樹だった。
「はいはい判りましたよ和樹カッコいいー」
いつもと違う非日常の中では悠里も少し強い。
というわけでスパゲッティとナントカサラダを頼み、いつも通りの雑談だか何だかを交わし、セットでついてきた飲み物を飲んで店を出た。今度は3階に行って和樹が悠里の好みそうなものを見つけるという流れになった。
「難しいなあ」
和樹は本当に少し困っている様子だった。なぜか悠里はしてやったりな気分である。
「そういえばさ」
悠里はふと気が付いたことを訊いてみた。
「昔の彼女だかにはプレゼントはしなかったの?」
悠里は訊いてみたが、
「もちろんしたよ」
相変わらずのあっさり口調で和樹はそう言った。
「その時はどうしたの?」
もちろん自分で選んで買ったと和樹は言ったが、
「柘植の櫛なんか欲しい?」
そう返されると返答に困る。ツゲノクシってなに?
「和興時代に情報収集をサボりすぎた」
いや時代の流れが速すぎるんだよ、と和樹は珍しく愚痴っぽい事を言った。
さて、あれこれ悩む和樹にとりあえず満足したので悠里は助け舟を出すことにした。小さくてあまり目立たず、でもそれなりにセンスはよく、あまりお高くないピアスを見つけたのでそれをじっと見つめる。和樹に声はかけない。これくらいは察してもらわないとまだまだ彼氏とは認められんなあ。
と、思ったら和樹はすぐ気が付いてさっとそれを手に取ってレジに向かった。おっとさすが自称神の子。そういう察し能力は高いのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます