第23話 ハードルを上げる乙女

「というか別に信じてるわけじゃないからね」

とりあえず上の飲食フロアに行って喫茶店に入り、注文を済ませると悠里は和樹にそう言った。


「なにを?」

和樹は意外そうに訊き返してきた。


「その……ナントカの子みたいな話」

多分まわりのお客は気にも留めないだろうが一応はぐらかした。


「ああ別にいいよ」

和樹はあっさりとそう言った。


「まあでも気持ちはありがと」

悠里はそう言った。そして言った後でなにやらこれで見切りをつけてしまったような言い方になった事に気が付いた。


「あ、イヤ、別に変な意味じゃなくて」

うーん何と言えばいいか難しい。


「僕は今の若い子がどういうものを欲しがるのかわからなくて」

和樹はしおらしくそう言った。


「あ、うん。すごく嬉しかったよ」

悠里はなにか慰めるようにそう言った。


「でも高すぎるよ」

悠里は常識的な事を言った。


「そっかあ」

そう言われて和樹は考える様子だった。


「それにさ」

悠里はふと思いついた事を言った。


「私が勝手に選んでそれを買ってくれるって、それマジでP活じゃん」

まあ傍目にはそうなのかも知れないけど。


「私が喜びそうなものを選んでプレゼントしてよ」

悠里はちょっとイジワルな目でそう言った。


「えぇ、それこそハードル高い……」

和樹は困ったようにそう言った。


「お金があるならそういうところで誠意をみせて」

悠里は少し優位に立った事が面白かった。こういうところはやはり元芸能人である。

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