第22話 ブラウスの恐怖
もちろん悠里は初デートでブランド品を買ってもらおうとするほど強欲な少女ではない。第一そんなの目立ってしょうがないし。一方で彼女は元芸能人なので、そういう物を見る目は同世代の少女より肥えている。
「あ、これかわいい……」
ふと白いブラウスに目が留まった。そして悠里はその意味にも気が付いた。
「うんいいね」
和樹もあっさりそういうが、悠里は和樹の腕を掴んで足早にその店舗の前を去った。
「あれ?」
和樹は意外そうに悠里に引っ張られる。
「いいの」
悠里はそう言ってエスカレーター前まで和樹を引っ張った。
悠里は知っていた。こんなに高級なブランド店舗がひしめく中で、一目でいいと思わせる商品がどれほどの値段がするのかを。
「プレゼントは嬉しいけど高すぎるのはやめて」
そういうところは極めて現実的な悠里であった。
「か……悠里は真面目だね」
和樹はやっと悠里を名前で呼んだ。
そして悠里は、このデパートに来るまでの和樹の紳士的な態度と、でもこの場違いなショッピングに連れてきた間抜けぶりと、たった今腕を掴んだ事と、ようやく自分を名前で呼んでくれた事で、急速に二人の距離が縮まったように感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます