第6話 雑談するふたり

──センセの車って高いんだってね


──まあね


──お金持ちなんだ


──無理して買っただけだよ


──その弁当自分で作ってるの?


──そうだよ


──彼女とかは?


──別れた


──なんで?


──難しい質問だね


──複雑なんだ


──死に別れ


──ほんとに?


──本当だよ


──え、なんかごめん


──いいよ昔の事だから


悠里の質問に兵藤は何でも答えてくれた。彼女との死に別れはさすがに驚いたが。それが感染ったわけでもないが悠里も兵藤の質問には正直に答えた。


──加藤さんは優等生だよね


──他にやることないから勉強してるだけだよ


──ないんだ?


──ない


──花の女子高生なのにもったいない


──私の青春はもう消費しちゃったもん


──早いね?


──私子役だったんだよ


──そうだったんだ?


──それが中学に上がる前にはもう需要ナシ


──厳しい話だね


──そんで中学の頃に一時期荒れたんだけどさ


──ほう?


──それも飽きた


──それで今は勉強ばっかり?


──そういうこと


──真面目だね


──簡単だし箔がつくしね


──頭がいいんだね


──これが難しいってほうがわかんない


──すごいね


二人の会話はとりとめもなく、もちろん色気もなく、しかしお互い気兼ねする事もなく、正直に本音で語り合うことができた。それは単にお互い正直だから成り立ったのではなく、精神的な波長が合っていたから成立したのかも知れない。


そんな雑談はさらにあるきっかけで少し変わった。

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