二章 だべりあうふたり

第7話 セックスとは

「センセあの噂ほんと?」

ある時に悠里はそう訊いた。


「どの噂の事だかわからないけど多分本当だよ」

兵藤は少し集中して弁当を食べている。今日は箸を忘れてしまったのでコンビニの箸で食べているのだが、それが途中で折れてしまって食べづらいのだ。


「生徒がラブホ入るのを見逃したって」

これは有名な噂だったが悠里はついさっき初めて聞いたのだ。


「あああったね」

兵藤は食べづらそうにご飯をすくいながらあっさり言った。


「……センセらしいよね」

悠里は横目でちらりと兵藤を見て言った。


「十代でセックスに興味ないわけないし」

これまたあっさりとすごい単語が飛び出した。


「……ちょっとお」

悠里はちょっと恥ずかしくなってそれ以上は言えなかった。


「でももったいないよね」

兵藤はもぐもぐしながら妙な事を言った。


「もったいない?」

悠里はその言葉の意味を問い質した。まさか意外と処女とかにこだわる男?


「多分避妊するんだろうし」

悠里は兵藤の言葉の意味を計りかねた。


「当たり前じゃん」

子供なんてできたら大変だし。


「もったいな」

兵藤はご飯の最後の一口と唐揚げを口に放りこんでもぐもぐしたまま言った。


「なんのためにセックスするんだって話」

口の中のものを飲み下すと兵藤はそう言った。


「子供できたら大変じゃん」

悠里は当たり前の事を言った。


「子供を作るためにするものだし」

いやそうだけどさ。


「センセだって15で子供欲しいとは思わなかったでしょ?」

誰でも知ってる兵藤の初体験の年齢である。


「欲しかったよ?」

ほんとに?


「がんばったけど当たらなかった」

いやいやいや。


「15で子供なんてできたら育てられないじゃん」

悠里は常識的な事を言った。


「育てるよ」

兵藤は真顔、というより当たり前のように言った。


「どうやってよ?」

悠里は少ししてそう聞いた。が、


「がんばって」

あまりにも普通に言うので悠里は吹き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る