第4話 兵藤和樹という教師
兵藤和樹は微妙な人気をもつ若手の教師だった。見た目はイケメンである。それだけでもまあまあモテるのだが、この男が人気なのはそれとはやや違う。
この人物は「話がわかる先生」であった。とにかくうるさい事は言わない。かと言って生徒に興味がない訳でもない。さりげなく生徒の味方になってくれる教師だった。
生徒の質問にも真面目な相談にもちゃんと時間を取って対応してくれるし、中間や期末で自分が出す問題を思いっきり教えてくれたりもする。またどういう理由かは不明だが模擬やセンターの問題もズバリ当ててくる事も多い。
かといって献身的な理想の教師では決してない。自家用車通勤なのだが車は何とBMWのミニである。学校で一番若手の教師が学校で一番いい車に乗っているのだ。噂ではラブホテルに入る生徒カップルを見て見ぬふりしたとか、居酒屋で生徒と鉢合わせても無視したとか、とにかく「話がわかる先生」という評価でかたまっている。
また生徒の変な質問にも平然と答えたりもする。従って東高草木高校の全ての生徒は、兵藤和樹氏の初体験の年齢を知っていたりもする。
──気持ちいいというよりやっぱり興奮するよね
兵藤は下品な言葉も使わないし、大げさなことも言わない。まるで天気の話でもするように淡々と初体験談を語り、その冷静な物言いに生徒は逆に興奮したり、交際相手との性交渉の認識を改める者も多かった。
兵藤和樹という教師はそういう人物だった。
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