第10話 炎上未だ収まらず、生徒会
「生徒会に入らないか?」
「はえ?」
俺は唐突な勧誘に俺はマヌケな声を出してしまった。
「ちょうど、家庭の都合で転校する子がいてね、席が空いてしまったのだよ。君さえよければ、だめかな?」
「……ちょっと考えさせてください」
「うん、断れるかと思ったからその返答だけでも嬉しいな」
ニコニコと笑うアヤメさん。
そろそろ運動会や中間テストも控えている。
どちらも、あまりやる気はない。
俺は中学校に入ったときの楽しいと思える気持ちが大分なくなっていた。
生徒会か、今の俺が心休まるところなら、考えてみてもいいかな。
どうせクラスには居づらいんだし。
でも負担がどれくらいかかるか、遅くなって親に心配はかけたくない。
「とりあえず生徒会ってなにをやるんですか?」
「色々と言ってしまえばそれまでだが、生徒の意見を吸い上げ、各委員の要望を聞いてまとめたり、後は各行事の取り仕切りなどかな」
「めちゃくちゃ大変そうじゃないですか」
「大丈夫、君に任せるのは庶務、いわゆる雑用係だ。そんな仕事はない」
それ、俺いる意味ある?
「あ、俺必要ないだろ? って顔をしているな。チチチ、庶務というのは便利屋と言っても過言ではない。なんでもこなせるスーパーマンだぞ」
「ガラじゃないですね」
「そんなこと言わずに~、お・ね・が・い」
両腕をがしっと掴まれ、上目遣いで頼まれる。
これを断れる男が果たしているのだろうか? いやいない。
「……はぁ、わかりましたよ、やります、やりますよ庶務」
「本当かい! ありがとう!」
そういうとアヤメさんは俺に抱き着いてきた。
マシュマロかな? 俺の顔にはおいしそうな香りのする二つの実った果実が押し付けられていた。
◇◆◇◆
動画が拡散されてから一週間経った。
未だに収まる気配がない。
一旦収まったかと思うと、過去のいじめや恫喝している動画が次々と流れてくるのだ。
連鎖的に広まるそれは、もはや炎上を通り越して家に放火されているようだ。
水を撒いても撒いても火の勢いは落ちることはなく、永延と薪をくべられている状態だ。
「ちっ、まだかよ。俺以外の連中はどうなってやがる」
俺は苛立ちつつも、いつものメンバーに連絡を取る。
「お前ら、今どうだ?」
「うちは大丈夫です、あんまり動画に映っていなかったみたいで」
「俺もです、加藤さんのほうは大丈夫ですか?」
大丈夫なわけねーだろ!
何故か俺のだけ動画が多いし、俺のいじめwikiまで作られてるじゃねえか。
これどうにかなるのか? ホントに
親父の力があればどうにかなるかと思っていたが、あまりの炎上の長さに危機感を覚えだした。
大丈夫だ。 まだ、慌てるような時間じゃない。
時間さえ、時間さえあれば、必ず鎮火する。
火は必ず消えるから火なのだ。一生燃料をくべられない限り。
◇◆◇◆
「この度庶務として生徒会に入ることになりました、中村雄太と言います。一年生ですがよろしくお願いします」
ぱちぱちと拍手に迎えられながら生徒会の一室で挨拶をする。
イメージしていた、生徒会っぽい綺麗な机とかはなくて、空き部屋のような雑多な感じに少し驚く。
「実際の生徒会室なんてこんなものさ、やることも地味な作業が多いし、ほら、そこにある段ボールなんて何が入ってるかも分からないさ」
アヤメさんがそう説明してくれる。
「俺は副会長の東だ、まあ会長が優秀何でほとんど名誉職みたいなものだ、やることはない」
「私は会計の甲斐です。主に生徒会費の管理を任されています。」
「私は書記の山本、大して役に立たないけど一応議事録作ってます」
皆さんが自己紹介をしてくれる。
みんな二年生で上級生になる。
「さて、今日は特に議題はないんだが、一応彼の紹介ということで集まってもらったし、一つ話題をあげようじゃないか」
アヤメさんが意味深な言葉を言う。
「最近では学校の情報をSNSで上げることも珍しくない、そこでだ、うちの学校でもホームページだけでなくツイッターで情報発信をしていこうと思うのだが」
「今の時期にですか!?」
東さんが驚く、
そりゃそうだ。
今その話題の渦中にいるのに、わざわざ自分たちから名乗り出るのはどんな意図があるのだろうか。
「だからこそ、だよ。学校側が何もしなかった。それだけでは不評を買ってしまう。ひいては生徒全体のイメージダウンに繋がる。そうならないためにも、生徒会という役職を使って堂々と情報を発信したらいい。もちろんつぶやきは自由だ」
「えっと、誰が運用するんですか?」
「それはもちろん、中村君だ!」
「え!俺ですか!」
突然の指名に俺は固まってしまう。
だって庶務って言いましたよね。
大した仕事にないって言いましたよね。
いきなりハードル高くないですか。
俺が驚いてアヤメさんを見ていると、意地悪そうな顔でにやりと微笑んでいた。
美人だけど怖い!
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