第20話
おーっと……
ぼうっとする……ぼうっとするぞー
目覚めた私は状況を把握するのに少し時間を要した。ゆらゆらとテントの中をランプの光が照らしている。そうだ、私、寝ちゃって、目が冴えてたのに寝ちゃったのか……。どのくらい寝てたのだろう? まだ体が重い…。
「さむ……」
何だかぞくぞくする感覚が身体中を襲う。
うわ……嫌な予感しかしない……
体を起こす。ぐら~りと視界が歪んだ。
これは……まずいな……。
かけられていたタオルケットをぐっと胸元へ寄せる。
「目が覚めちゃった?」
声がした方向に視線を持っていく。私の方を見つめてるキラキラな黒い瞳。
薄明かりのなかでますますエキゾチック。
「
「もっと休まないと。寝れないの?」
「結構寝たと思うけど……」
顔を覆いながら意識を集中する。反射的に見られちゃまずいって反応してしまった。
「1時間半くらい。2時間経ってないよ」
そんなに……時間が経ってる…。薬飲んで2時間くらいか~……
「ごめん、私、代わるよ。ジュキくん、とアキラくんに声かけて……」
顔を覆っていた私の右手の甲からひと肌の温もりが不意に感じられた。手が顔から離されて、そのさきには尚惟の真剣な顔があった。
「二美さん、なんかあったかい」
「え、寝てたからじゃ……」
額にショウの手が触れる。
え、これは寝起きには衝撃が強い。近いんですけど、ショウの顔。
「熱いんだけど」
「えっと……」
そんな近くで怒んないでほしい。怒ってる姿も綺麗で、もう、くらくらしてしまう。
「……熱ある」
ええ……発熱のくらくら……?
「大丈夫だよ。たぶんちょっと疲れただけ」
「だけ?」
尚惟の目に力がこもった。
「他に言うことは?」
尚惟はグッと距離をつめると、つかんでいた左手を自分の方へ引き寄せた。
声を出す暇もなく尚惟の胸に飛び込んだようになってしまった。
「他には?聞くよ?」
ドキドキ、くらくら、熱上がっちゃう……
「ショウくん、ドキドキするんですけど……」
「うん、俺、遠慮しない」
これは、言わないと質問責めのパターンですね。
「…………ぼうっとするの、ちょっとしんどくて」
「うん、分かった」
ほわっとした優しい声色がふってくる。顔を上げると、尚惟が見つめていた。
にっこり笑って、ぎゅっと抱き締められる。
「ちょっとじっとしてて」
耳元でささやくなんて反則だー。
体ををそのまま横にして寝かされた。だから、近いんだって。
頭のしたに尚惟の手がある。まるで腕の中で眠っているような…………。
いやー……もう、ダメだ、パニックになる。
尚惟のかわいさが何だかここに来てかっこよくて、困ってしまう。
「ちょっと待ってて、何か下にひけるものを裕太さんに準備してもらう」
行こうとする尚惟の服の裾をつかんでしっまった。
「え」
え
「え、あ、ごめん」
急いでつかんでいた裾を離す。
「ごめん!思わず、ぼうっとしちゃって、」
動きが止まった彼。呆れたよね。思わずどっか行っちゃうと思ったらつかんでしまった。
ああーもう、恥ずかしい……。熱にうなされたか、はあ……。
「ごめん、待ってます。はい」
かけてもらったタオルケットを頭までかぶる。すると、つかんでいたタオルケットが自分とは違う力で引き下げられた。
「二美子さん」
「はい……」
暗くて良かった。明るかったら正気でいられなかった。
目元だけ覗く。すぐ目の前に尚惟の顔がある。だから、近いよ……
「ちゃんと言って」
「え」
「ほら、言って」
「……行かないで……?」
にっこり笑う、ショウ。
「分かった。行かない。側にいる」
もう、イニシアチブとられた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます