第19話

「なかなかでしたね、主催者」

「そりゃそうだろ、やっと開催できたんだから、ちょっとでもやりたいわな~」

いきなり「犯人逮捕のために中止してください」なんて受けきれないよなー。

僕が到着した時には、すでに交渉は終わり、応援との打ち合わせや変更事項連絡も終了していた。荒いだけでなく、繊細な動きもこなす先輩は見習うべきとこが多すぎて、毎日が飽和状態だ。

本部から来たメールのチェックも済ませ、おそらく頭のなかは確保後のことだろう。

「けど、よくOK出しましたね先輩。」

主催者が12時まで待ってくれ、と要望を出してきたため、まだ周囲はお祭り騒ぎだ

まあ、しょうがないよな、相手は商売人だし……

「入り口には警備員と称して警官を4名配置してる。大丈夫だ」

そういいつつ、先輩がスマホを俺に見せてくる。

「ん?なんすか?」

見ると2課にいる先輩の同期、タケル先輩からのメールだった。

「え、7番目のグループの演奏中に落ち合うとの情報?これって……」

「そ。そのバンドが演奏するのが10時過ぎ辺りじゃないかって踏んだ。状況を聞いたらまあそんなとこだというから。主催側もこの前後をどうしてもやりたいみたいだし」


うわー、こっち側からお願いしたんじゃなくて、あくまでも警察が考慮したみたく交渉したのか……


「詐欺師みたいっすね」

「人聞きが悪い。WINWINな関係ってやつだ。最近流行ってるらしいじゃん。お互いやな思いもしねえだろ?」

こういうことをイレギュラーでやってくからかなわないんだよな。

「で、顔覚えたか~」

「はい。名前は凌平リョウヘイですよね。双子の兄、右手に火傷痕でしたよね。応援警官は全部私服でしたね」

「警戒されたら終わりだかんな。こっち側は左イヤホン、白い靴、黄色のブレスレット。ちなみにこれ発信器つきな」


そつがない……


「一式入ってるから着替えて来い」

「了解です」

ひと揃え入っているらしい袋を渡される。これって……

「テントでの様子も見てくるんですね?」

ニッと笑う裕太。

「回転の早いやつは好きだ」

へいへい、見てきますとも。僕も気になってるしね。

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