第16話

「ゆっくり休め。あとでみんな順番に休むから。手出しはさせねえから」


 怖いこと言ってるわ……


光麗ミツリは思わずコーヒーをこぼしそうになる。

この人はホントに手出しさせないだろうな。

「光麗、3人は?」

「食い物買って来るって」

「そうか……」


おや……?


光麗は裕太の表情が仕事モードになってることに気づいた。

「課長からの電話、なんだったんです?」

さっきは二美ちゃんの非常事態によりすっ飛んできたため、何の電話だったのかが分からないままだった。

「この間から2課が動いてる強盗、空き巣の件あるじゃん」

「ああ~ここんとこ騒がしいですよね。でも一昨日何人か捕まってなかったですかね?」

「うーん、そのうちの一人がさ、ここの券を持ってたらしくてさ、どーもその時の仲間と落ち合おうとしてたらしいんだわな~」


 でた……


わが先輩は仕事できるんだけど、引き寄せもするんだよな。

「光麗、その表情、何」

「ええ~だって非番すよ」

「俺だって交渉しました。これ、うまく引っ張れたら1週間有休とってよし」


 何!


「ホントに?」

「ホントに。すごいだろ?」


すごい…。1週間て、夢のようだ。忙しくてまとまった休みなんてとれた試しがない。旅行行ける日数だ。

と、待てよ、

「けど、そんな好条件を出すってことは」

「そ、面倒かもな。後で写真と内容がスマホに送られてくる。チェックするぞ」

「はい。あっと…3人には言いますか?」

「ああ。言わねえと説明つかねえだろ?ここからでるのにひとりひとり聴取が入る。時間かかるだろうな~」

「ああ~……じゃあ僕、伝えてから行きますよ。主催者に説明しに行くんでしょ?」

「おう、急がねえから、連絡だけ気にしといてくれ。1時間したら応援が来る」


 話しはやっ


頭の回転早いんだよな。ほんと尊敬する。シスコンだけど……。

「ちょっと調子悪いんだよな、二美」

「え、雅人の件で?」

「それももちろんあるだろうけど、貧血もかな~。顔色が悪いし、なんだろう?」

妹のことになると急にうろたえる……。

「すぐ帰してやれないのがいらっとすんだよ」

これは、荒れるな……犯人にちょっと同情

「あいつら3人にはビシッと言っとかないと。必要とは言え、同じテント内に泊まるってのは体をひきさいてやりたい……。が、致し方なし、、」


もう、ぶれないなあ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る