第10話

 琉太リュウタはああ言っていたが、オレはひっかかっていた。ここで二美子に会ったのは、ほんとに偶然だった。いくらオレでも全くどこに行ったか分からないやつを探すほど暇じゃねえ。けど、

「探さなくても会えたじゃん」

 オレの中であの頃の気持ちが甦ってくる。

 出会って、彼女が屈託なくそこにいる空間にひかれた。そばにいてほしいって思ったんだ。ほんとに。

 何で、近づくと離れるんだ?

 彼女を見つけたとき、夢かと思った。

 大学在学中に、ことごとく俺の思いが通じなかった女。その後もそんな女に出会わなかった。ずっと気になってたんだ。久しぶりに合った彼女は楽しそうに男といた。それも年の若い男と。弟かとも思ったが、あのベンチでのやり取りはただの関係じゃなかった。

「あいつ、あんな細いのが好みかよ……」

 もやっとした気持ちが心を覆っていた。

 琉太や一緒に来たダチとテントを張った後、飯買ってくると言い残し、探している。

 会えたんだから、また会えるはずだ。


 ー「手を離して」


 過去と違って、オレのことしっかり見ていた。吸い込まれそうな瞳だった。

 あの頃の気持ちに戻っていた。

 二美子はオレのものだ。

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