第28話 チーム力底上げ週間 その2
♪「でっかいことーは素晴らしいー」♪
♪「でっかいことーはいい事だー」♪
翌日、オープンと同時に『グランド デポ 東京幕張店』にナジームさんと一緒に行くと、さっそく『グランド デポ』のテーマソング『ビック イズ ビューティフル』がお出迎えしてくれた。
「はー、これがサファイヤさんの言っていた『グランド デポ』なんですか……私の想像をはるかに超えてました」と正面玄関であたりをキョロキョロと見渡しながらナジームさん。「そして、天井が高い。まるで以前に聞いたことのあるオリンポスの宮殿の様ですね」と。
なるほど、初めて見た人にはそんな印象が浮かぶものなのか、普通の教養をもった大人の人ならば……と、「でっけー」と「かっけー」しか言わなかったエルウッドさんを思い出す。
私がまず最初に「サバンナコーヒー」でコーヒーを飲みながら予定を立てましょうと言っても、「その時間がもったいないから、飲みながら歩きましょう」と建設的な意見を出すナジームさん。そうそう、こういうの、こういうの、私はこういうのを期待してたんだよ、聞いているかエルウッド!!
「ここがー、その、サファイヤさん……いや、こちらの世界ではあかねさんでしたっけね。あかねさんが言っていた木材売り場なのですね」と。
こっちに来るときにナジームさんに私のこちら側の世界の名前を教えておいたのだが、面と向かって呼ばれると、やっぱりちょっと照れてしまう。
「はい、私はこの木の香りが好きでついついここに長居してしまうんです」
「なるほど確かに、おっしゃる通り、かぐわしい木々の香りが漂ってますね。世界中の木材が集まっているというのは確か見たいですね。しかもいろんな大きさにカットされているのですか……これなら、ここにある木材を組み立てるだけで家が出来上がりそうですね。」
「そうですね。それに建築用の資材だけではなく、工芸品で使われるような木材も取り揃えてあるのですよ。ここには」と、いつかはテーブルで使ってみたいなーと思っている黒檀(コクタン)の一枚板をうっとりと眺める。
「ほほーう、これは美しい黒檀の板ですねー」
「えー、ナジームさん、見ただけで黒檀ってわかるんですか?」
「はい、昔使えていた王族のお屋敷にありましたから覚えてますよ、黒檀は」と思いもかけずナジームさんの過去を覗き見れちゃった。こういうミステリアスな所が乙女は弱いんだよ。わかってんのかエルウッドさんよー!!
「ちなみに、お値段は…………」そういって、値札を見た途端に顔を引きつらせるナジームさん。
あっれー、ナジームさんもお心をお乱しになられることがおありなのですねー。
ちなみにお値段はたったの500万円ぽっきりです。一瞬で私の口座がマイナスになっちゃうわね(テヘペロ
でも、この黒檀がこのコーナーで一番高いってわけじゃないんですよ。こちらで一番高いのは百年かけて乾燥させた3m×1mの欅(けやき)の一枚板。お値段なんと!!たったの一千万円ポッキリでーっす。(ウヘヘヘヘ たまんねーな。
別に欲しいとは思わないけど、一度でいいからこういうテーブルの上で食事をしてみたいわー(ウフフ
すると、あんまりここにいると、金銭的な意味での危険を感じ取ったのか、「では、あかねさん、他のコーナーも見させていただいてもよろしいですか?」と、この「一枚板」コーナーから足早に過ぎ去っていくナジームさん。えー、もっとゆっくり見ててもいいんですよー。私はぜんぜん。
その後も、園芸コーナーや、食器、衣類コーナーを見て回る。見るものすべてに感心しきりのナジームさん。
「いやー、話に聞いてましたけれどほんと『グランド デポ』はすごい。とても2時間では回り切れませんね」とナジームさん。
あら、そうですか、ナジームさん。ナジームさんさえ良ければ明日も一緒に来ても私全然かまいませんことよ。(ウフフ
すると、おやっといった感じで足を止めたナジームさん。ここは色鮮やかなおもちゃ売り場。やはりこれだけカラフルなものが置いてあるとついついナジームさんのような大人の人も目を奪われてしまうのかな……と思ってみたら、「アレは……」とナジームさんはおもちゃコーナーの中に歩いていく。
そして、見上げた先にあるものは……ディスプレイされていた子供用のブーメランだ……なるほど、確かにナジームさんはブーメランが得意だと言ってたなー。
「はい、ブーメランですね。子供用のおもちゃですけれど、意外としっかりしてますね」とブーメランを手に取って私。
「なるほど、こちらの世界にもブーメランはあるのですね」とピンク色したかわいいブーメランをしげしげと眺める。「でも、これだとちょっと強度が足りませんね……」と。
まあ、確かにモンスターを攻撃するには、これではちょっと……いや、かなり役不足だ。
でも、私もちょっと興味があるので、「実は私、ブーメランって投げたことが無いんですよ。よかったらナジームさん、私にブーメラン教えてもらいませんか?」と。
すると、「勿論です」とナジームさん。そんなわけで、とりあえず、子供用のブーメランを買うことに決めた。
すると、おや、これは……?とその横のディスプレーに飾ってあったペットボトルのロケットを見て目を真ん丸にする。
「これはペットボトルロケットと言って、中に空気と水を入れて圧縮させて空に飛ばすおもちゃですよ」と……
「はーすごいですねー。サファイヤさん……もとい、アカネさんのいる世界には私には知らないものがたくさん置いてあるのですね」
するとその横にはフリスビーが……なるほど、ここは投げて遊ぶ用のおもちゃが飾ってあるのかな。確かに隣はドローンも飾ってある。
「えーっとこれは?」そう言ってフリスビーを手に取ってナジームさん。
あれっ、もしかして、あっちの世界にはフリスビーは無いのかな?
「えーっと、フリスビーと言ってこれもブーメランのように投げて遊ぶおもちゃなんですが……」と。
「はー、フリスビーですか」と懐かしそうな顔をしてナジームさん。「実は私の師匠という人が、これに似た形の武器を得意としていたのを思い出しました」
「これと似た形とは?」
「はい、鋼でできていて、周りには刃が付いているのですよ」……と。
「たしかに、周りに刃が付いていたら、相当えぐい武器にはなるなー」
「では、ナジームさんも?」
「いや、恥ずかしながら、私には鋼は重すぎて、練習用の木の円盤を飛ばすのがやっとでした」と申し訳なさそうに首を振る。
ああ、なんという事でしょう、そんな憂いに満ちたお顔でも十分美しい。すいません、写真一枚撮らせてもらってもよろしいですか?
と、その時頭の中でピーンと何かが繋がった。
アレ……これと似た形のもの、確かどっかで見たような気が……
「ナジームさん、ナジームさん、ちょっといいですか?」と私はナジームさんの手を引っ張って工具売り場に向かっていった。
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