第27話 チーム力底上げ週間 その1
「3」、「4」、「5」、「9」、「とばすなよー」とノエルさん、「10」、「Q」、「K」、「……パス」、「チェーンソー アタック!」、「パス」、「A」、「……パス」、「……2!」、「おーやるねー」とエルウッドさん。
「4のダブル」、「7のダブル」、「パス」、「パス」、「Aのダブル」、「チェーンソー アタック!!」、「……2のダブル!!」、「マジかー」、「ちょっと勝負早いんじゃないの!?!?」、「大丈夫かよ、サファイヤ」、「チェーンソー アタック!!!」
「ふっふっふっふ、皆さん覚悟はいいですか、えいっ、革命!!!」、「げー」、「マジかー」、「やはり、何か隠してると思ってましたが……」、「チェーンソー アタック!!……あれっ?」
「Kのダブル!」、「チェーンソー アタック、アタック……あ、あれっ」、「そういうことならJのダブル」、「8のダブル」
「オーイ、サファイヤちゃーん」
「なんですかー、今、良いところなのにー……」
「あのさー、チェーンソーのガソリンが切れたみたいでさー、その……動かなくなっちゃった」とベイルさん。
「「「「何っ!!!」」」」
カードを伏せてベイルさんの方を見ると……あらやだ、すっかりモンスターに囲まれちゃってんじゃないですか。私達……
「イヤアァァァァァ!!!!エイエイエイエイ!!!」
私は手元にあったガスボンベをあたり構わず投げつける。
「ファイヤ、ファイラ、ファイガ、ファイタン」
エルウッドさんもMPなんか気にせずになりふり構わず火炎魔法を乱れうち。
「テイ、テイ、テテイ、テイ、テテイ、テイ」
ノエルさんも後先かまわず矢が尽きるまで乱れ打つ。
しかし、ここは「フロアレベル8」、ベイルさんのチェーンソーのお陰で我々はいつの間にか分不相応なところまで降りてきちゃったのであります。
「いやーん、モンスターが全然倒れなーい!!」
「逃げ道!!逃げ道!!逃げ道を何とか確保しなくちゃ」とノエルさん。
「サファイヤちゃん、バール、バール、バールは何処にあったっけ!?!?」とベイルさん。
すると、その時、『エスケープ(離脱)!!!』と乾坤一擲、ナジームさんが最高級移動魔法を唱える。
すると、突然、私達の体の周りがふわーっと黄金色に包まれて……気が付いたら「ダンジョン204高地」の入り口に立ってました。
あー、黄泉の国に連れていかれたかと思ったヤレヤレ。
「やっぱり、ファイト中は何があっても、よそ見をしてちゃまずいよなー」とエルウッドさん。
「そうだな、それに、ベイルに全部任せっきりってのもいけない」とノエルさん。
「そうですよねー、その上、ファイト中に『大富豪』とか、さすがに調子に乗り過ぎましたね」と私。
「今日の失敗を糧にして、しっかりと今後の対策に役立てましょう」とナジームさん。
ここは、いつもの廃屋……もとい、秘密基地。
私達はナジームさんのお陰で、何とかフロア8から離脱すると、再びダンジョンに入る気もすっかり失せてしまい、そのまま急遽、秘密基地での緊急ミーティングをすることとなったのだ。
「しかし、よく、エスケープ(離脱)が成功したなー」とベイルさん。
「はい、この魔法は使用する魔力と比例して成功率も上がると聞いていますので…… 実は、先程のエスケープにはMP350を使いました」と。
「はー、さっきのエスケープ、MP350も使ったのかよ。なんかわりーな、ナジーム」とベイルさん。
「いえいえ、死んでしまったら元も子もありません。この魔法を使うときはいつも自分の持っている魔力全てと引き換えにして唱えるのです。そもそもここまでレベルアップさせてもらったのはベイルさんのお陰ですよ。使用魔法が300超えるとほぼ成功すると聞いてますし」としっかりと仲間を立てることを忘れないナジームさん。ベイルさんに深々と頭を下げる。
どこぞの無能なリーダーにもナジームさんの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいわ。水ばっか飲んでる場合じゃないんですよ!!
すると、「あー、水が美味しいなー」とどこぞの無能なリーダーは帰ってくるなり3杯目の水を飲んでいた。………ゴポンッ。
「あれ……じゃっ、じゃあ、もしかして、さっきの『エスケープ』失敗してたら、俺達、全滅してたとか?」とやっとあの時のパーティーの状況を理解することができた危機的意識の低い我らがリーダー。あのーすいません、リーダーってリコールできるんでしたっけ、このパーティー。……ゴポンッ!
「いえ、大丈夫ですよ、エルウッドさん。成功するまで何度でもエリクサーを飲むつもりでしたから」そういって、ローブの中から虎の子のエリクサーを見せるナジームさん。
「「「「……ほー」」」」と一安心のパーティー一行。
でも、こんな心構えでダンジョンに入っていたらいつかはきっと全滅してしまう。
もう一回、しっかりと心を入れ替えなければ。
すると、「うーん、やっぱ、チーム力全員の底上げかなー」と至極まっとうなことを言うエルウッドさん。
もしもし、どうしましたか?
もしかして、なんか変なものでも拾って食べたりしてませんか!?
あっけにとられる私達を尻目に、エルウッドさんはすっくと立ちあがると、先日『グランド デポ』で買ってきたホワイトボートをテーブルの前に持ってきて、レーザーポインターを使いながらなにやら説明をし始めた。
あー、さてはエルウッドさん、ただ単にホワイトボードとレーザーポインターを使いたかっただけなんでしょ!!
「そもそも、俺達のパーティーって、近中距離攻撃がベイル」「うんうん」
「中、長距離攻撃が、俺とノエル」「うんうん」
「そして、サポートがナジームとサファイヤということになってるんだ」「うんうんうん」
どうしたことでしょう、エルウッドさんの説明がちゃんと的を得ている。
「ベイルは、サファイヤが買ってきてくれた手斧で中距離攻撃もできるようになったし、そもそも俺は短・中・長とどこでも行けるオールラウンダーだ」
「……そうなんですか?」と今話しているエルウッドさんではなくナジームさんに聞く私。
「はい実はそうなんですよ。エルウッドの攻撃魔法は短・中・長距離のどこからでも攻撃が可能なのです。ただ、短距離で使えばその分物理的に距離が近くなるため敵に大ダメージを与えることができますし、魔法ですから、長距離から使用してもそれなりのダメージを与えることは可能です。もちろんその場合は攻撃能力は低下しますけど……」
「なるほど」
「その代りと言っちゃなんですが、短距離で戦えばカウンターで相手からのダメージも食らいますし、長距離で戦えば相手からの攻撃を回避する確率も高くなります」
「ふんふんふん」
「そんなわけで、俺はその時の状況によって、短・中距離で戦うことにしているんだ」
「なーるほど、でも最近、エルウッドさんは私達と一緒に岩場の陰に隠れてガードゲームしてますよね」
「ぐむっ…………」と、エルウッドさんが口を噤んだ。
「まあまあまあまあ」とその場を取りなすナジームさん。あざーっす。
「まあ、サファイヤは俺のサポートということでどうしても外せないし、そう考えると、ナジーム、お前、なんか、効果的な攻撃持ってないか?確か昔はブーメランとか使っていたよな」とエルウッドさん。
あらやだ、ナジームさんも普通に攻撃に参加してたんですか?よっぽどのことが無い限りフォーメーションに加わる事なんか無かったと思ったのに。
そんな顔でナジームさんを見ていたら、「ああ、すまない、サファイヤ、お前には言ってなかったけど、ナジームはお前がパーティーに加わる前には、長・長々距離の攻撃を担当してもらってたんだ」と。
「へー……そうだったんですか?」サファイヤ初耳!?
「でも、私の攻撃なんか、本当に大したことはないのですよ」とナジームさん。いえいえ、そんな謙遜必要ないですよ。
「それに、なんてったって、ナジームが負傷してムーブ(移動)が使えなくなっちまうことの方が、パーティーにはリスキーなんだよなー」とノエルさん。
ああー、確かにー。
「ある意味、替えのきかない存在なんだよ、ナジームは」とエルウッドさん。
「いえいえ、そんな言葉はもったいないですよ、皆さん」と。
まー、でも、確かに長・長々距離の攻撃担当がパーティーに加われば攻撃に厚みが出るのも確かなことだ。
なんか、いい方法は無いものか……と思ったところで、私の頭にピカーンとアイディアが閃いた。
そうだ、そういう時こそ、『グランド デポ』に行けばいいのだー!!
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ナジームさん、私と一緒に『グランド デポ』に行きませんか?」
「『グランド デポ』ですか……」と言葉少な気にナジームさん。
実は私が『コンパニオン』を唱えられるようになってからまだ一度もナジームさんとは『グランド デポ』には行ってないのだ。
ナジームさんも最初は『グランド デポ』に行く気満々だったのですが、一発目に言ったエルウッドさんがウォーターサーバー業者に引っ掛かったり、迷子になりかけたりと、こっちに戻って来てから散々私に怒られているのを見て、すっかり行く気を無くしてしまったのです。「サファイヤさんに迷惑かけるのは申し訳ありませんからね……」と。
いえいえいえいえ、ナジームさんでしたら、ウォーターサーバーの一台や二台全然気にしませんから。なんなら、『宿屋アニータ』のナジームさんのお部屋にウォーターサーバー取り付けましょうか?
「ねえ、行きましょうよ」と私。
「でも……」とナジームさん。
すると……「だったら、ナジームの代わりに俺が言ってやってもいいぞ」とエルウッドさん。
「テメーは黙って、水でも飲んでろ!!」
「…………ハイ」
というわけで、ナジームさんと一緒に『グランド デポ』に行くことが決まったのだー。(ヤッタネ♪
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