第20話 秘密基地へようこそ その2
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♪「自転車 自転車 ルンタッター ルンタッター」♪
♪「サイクリング サイクリング 楽しいなー」♪
♪「自転車 自転車 ヤッホー ヤッホー」♪
♪「サイクリング サイクリング うれしいなー」♪
♪「あなたも サイクリング わたしも サイクリング」♪
♪「野を超え 山超え 海超えてー(ムリムリ)」♪
♪「あなたと 自転車つなぐ場所ー」♪
♪「ようこそ ここは サイクルー デポー 」♪
朝一番で『グランド デポ』の自転車屋さん『サイクル デポ』に行くと、まるで呪文のように『サイクル デポ』のテーマ曲『自転車天国』が流れていた。
いったんこの曲が頭の中に入ってしまうと、半日は頭の中でリフレインするのだ。
特に以前、一度サイクリングをした際に、思わず1曲目にこの歌を口ずさんでしまったら、結局、サイクリングが終わるまでずーっとこの曲が頭の中をリフレインし続けた。「おさかな天国」と双璧をなすなかなか麻薬性の高い歌。恐るべき『自転車天国』
というわけで、狙いは一つ。毎日限定10台限りの『サイクル デポ』オリジナルのママチャリ。その名も『ママチャリ デポ』を買いに来たのだー!!
まあ、坂道もない町はずれの倉庫を往復するだけの自転車なのだから、別にギアなんてなくったっていいっしょ。
そして特筆すべきはお値段がなんと9800円ぽっきりなのだ。
あたりを見回しても特にこの自転車を狙っているというお客さんはいなさそうだ。まあ、買えなかったらまた明日も来ればいいだけの話だし……というわけで、早速店員さんに声を掛けて自転車を見繕ってもらおう。
「すいませーん、店員さん」
「はい、なんでしょうか?」
「この本日限定の『ママチャリ デポ』を5台…………おやっ?」
「はーい、ただいまー」
「おう、早かったじゃねーかよ」と宿屋の一階の待合室で新聞を読んでいたエルウッドさん。
「で、自転車ってのはどれどれ」と隣のソファーで弓の調整をしていたノエルさん。
「そういや、サファイヤちゃん、朝飯食ったか?」とサンドイッチを食べながらベイルさん。
「あ、大丈夫です。(向こうで朝マック食べてきましたから)」とわたし。
「ほほーう、あれが『自転車』というものですか?」と窓の外を眺めながらナジームさん。
「「「ほほーう、どれどれ」」」と残りの皆さんも窓辺にやって来た。
『グランド デポ』で買ってきた自転車は『宿屋アニータ』の前に停めておいたのだ。
……5分後、早速みんなで自転車を試し乗りする。
皆さん運動神経がいいのであろうか、さほど練習しないでも『ママチャリ デポ』をスイスイと乗り回している。
………………エルウッドさん以外を除いては。
「押すなよ、押すなよ、押すなよ、押すなよ…………って、さっさと押せよー!!」とエルウッドさん。
「オメーはどっちなんだよ、はっきりしろよー!!」と若干キレ気味のノエルさん。
パーティーのリーダをしているくらいだからそれなりに運動神経はあったと思ったのだが……まさか、この中で一番運動が音痴だったとは……意外だった。
「おいおいおいおい、エルウッド、こんなん、ペダルを踏めばスーイ、スイだぞ」と早くも完璧に乗りこなしているベイルさん。でも、なんかその姿は、サーカスでよく見る自転車乗りの熊さんを彷彿される……すいません、ベイルさん。
すると……「そもそも、運動神経がいいのなら、魔法使いとかは目指しませんからね」とナジームさん。
……なるほど。
確かに体術系のベイルさんやノエルさんは一度も転ぶこと無く、あっという間に自転車を乗りこなせている。
そういや、エルウッドさんってパーティーでも魔法以外使っているの見たこと無かったものなー。
「ああ、痛ってー!!大体、車輪が二つしかついてないんだから、普通に倒れるだろ、こんなもの!!」とキレ気味のエルウッドさん。こんなんなら三輪車でも買ってくればよかった。ってか、補助輪でもつけましょうか?エルウッドさん。
すると……「だいたい、サファイヤ、テメーのだけ、なんでそんなに形が違うんだよ」と今度は私に矛先が向いて来た。チッ、あーあー、めんどくせーなー全くもー。
実はみんな揃って『ママチャリ デポ』を買おうと思ったのだが、店内のディスプレーの一番目立つところに飾ってあった新発売の電動キックボードに目が止まり、ついつい衝動買いをしてしまったのだ。(テヘペロ
『グランド デポ』と電動キックボード国内トップシェアのヤマダ工業とのコラボモデル、『お気楽 デポ』なんとお値段、本日大特価の128,000円ぽっきりだったのだー(ワー、ドンドンパチパチ
しかも、このキックボード、この『サイクル デポ 東京幕張店』で購入すると、今後『お気楽 デポ』で来店すれば、いつでもこちらの『サイクル デポ』の充電コーナーで無料で充電できるのだー(スゴーイ
つまりこういう事です。この『お気楽 デポ』でこちら側の世界をいろいろ乗り回してバッテリーが無くなっても、私が『グランド デポ』を唱える時に乗っていれば、『サイクル デポ』の店頭でいつでも無料で充電できのですよ。お客さん!!
大切に乗らなくっちゃね『マリリン』ちゃん。私は早速この電動キックボードに名前を付けていろいろとカスタマイズしようと思ったら……「俺にも、それを乗らせろよ」と私のマリリンちゃんを指さしてエルウッドさんが言った。ああんっ!?
「や……やですよー」とマリリンちゃんをギュッと抱きしめる私。
「いいから、ちょっと、ソレ俺にも乗らせろよ」と愛しのマリリンちゃんを指さしてエルウッドさん。やめてください!指差さないで!穢れるから!!
「やだ」「乗らせろ」「やだもん」「乗らせろよー」「ヤダッ!」「乗らせて」「ヤですー!!!」「乗らせろー」…………
「おいおい、サファイヤちゃん、こうなったらあいつ、テコでも動かないぞ」とノエルさん。
……確かに、私もそう思ってたところだ。……けど。
すると、「それにー」とちょっともじもじしとノエルさん。
「はい?」
「僕も、それ、ちょっと、乗りたいなー……なんて」
…………はぁー。しょうがあんめー。
すると、「俺も」とデニスさん、実は私もと「ナジーム」さん。みんなそろって手を上げた。
……ですよねー。
そんな感じで、自転車講習から急遽電動キックボード講習へと変わった。
「前に進むときは、この親指の所にあるレバーを押してください」
「「「ふんふんふんふん」」」
「こうかい、サファイヤちゃん」とノエルさん
うんうん、うまいうまい。
「止まるときは、このブレーキ」
「「「ふんふんふんふん」」」
「こうかい、サファイヤちゃん」とノエルさん。
うんうん、うまいうまい。
「あと、右に曲がるときは右に、左に曲がるときは左に、ウインカーを出してください」
「「「ふんふんふんふん」」」
「こうかい、サファイヤちゃん」
うんうん、うまいうまい。
呑み込みの早いノエルさんは「電動キックボード」の操作説明を一通り聞き終えると私以上に上手に乗りこなした。
うーん……なんか納得いかないなー。
そしてその説明を聞いていたナジームさんも、ノエルさんの乗り方を見て同じように乗り回せた。
さらにちょっと体重が心配だったベイルさんもスーイスイ。
「ほほーう、こりゃ楽ちんだわ」とご機嫌です。
あらやだ、ホントにみんなお上手ですねー。
そして最後に「じゃあ、次はオレオレオレー」と一番うるさかったエルウッドさん。あなたちゃんと説明聞いてましたか?
そして大喜びで電動キックボードの「マリリン」ちゃんに乗ると、最初のカーブを曲がり切れずにエルウッドさんはガチャンとこけた。
テメー!!ぶち○すぞー!!
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