第21話 秘密基地へようこそ その3

「あーあーあーあー、痛かったねー、可哀そうだねー」と部品は壊れはしなかったけど、横のフェンダーの部分がガリガリになってしまった私のマリリンちゃん。


「ヒーラー、ヒーラー、えいえいえい!」私は無理とは思ったのだが、必死にマリリンちゃんの傷ついたフェンダー部分にヒーラーを掛ける。


 すると……「おい、そんな機械よりも、さっさと俺の方の怪我の、直してくんねーかな?」と左半身が擦り剝けて血まみれになっているエルウッドさん。


「うるさい、黙れ!あんたなんか出血多量で○んでしまえ!!」


「おー怖っ」とノエルさん。


「まあまあまあまあ」とベイルさん。


「まあ、エルウッドも反省してることですし」とどこまでも冷静なナジームさん。


 私は「チッ!」と舌打ちをちゃんとエルウッドさんに聞こえるようにしてから、「はい、ひーらー」と今年一やるきのないヒーラーを掛けた。


「おいっ、『ハイラー』じゃねーのかよ!!」


「うるさいっ!!黙れっ!!そのへらず口にガスボンベぶち込むぞ!!」


「…………」


 はい、ここで気が付いた方はいるでしょうか?


 初級白魔法使いの私、サファイヤ・ローレンスは先日めでたく中級回復魔法の『ハイラー』を覚えることができました。(ワーパチパチパチ


 というわけで、無駄だと思いつつもマリリンちゃんに「ハイラー、ハイラー、えいえいえい!!」と覚えたてのハイラーをかけてみる。


 が、やっぱり効果は無いみたいです……ぐっすん。コレって、購入時に入った1年間無償修理保険でどうにかなりませんかねー、サイクルデポの店員さん。


 というわけで、その後、みんなの特訓の甲斐もあってか、日が沈む前には、自転車にも電動キックボードにも(私は本当に乗らせたくなかったんですけどね)なんとか乗れるようになったエルウッドさん。


 自転車を初めて補助なしで乗れた瞬間、ちょっと涙ぐんでいたエルウッドさん。人って自転車が乗れるようになるだけでこんなに感動するものなんだ。まぁ、知らんけど……


 すると、「あのー、実はサファイヤさんには言いそびれていたことがー」と言いずらそうにナジームさん。


「はい、なんでしょうか?」ナジームさんがこんな顔になるのは珍しい。


「実は、私、普段も街の移動には乗り物とかは使わずに『ムーブ』で移動してるんですが……」と。


「………………あっ」



 …………10分後、


「あらあら、なんだか悪いわねー、本当にいいの?」とアニータさん。ナジームさんが乗るはずだった白いママチャリをスイスイ乗りこなしている。なるほど、エルウッドさんの運動神経はアニータさん以下だということが分かりました。


 ナジームさんが自転車を使わないと分かったところで、みんなで話し合って、だったらこのままにしておくのももったいないし、いつもお世話になっているアニータさんにあげようということに決めたのだ。


 その上、私があげた自転車をいたく気に入ってくれたアニータさんは「じゃあ、あんたらの全員の宿代、1週間ただにしてあげるわ」と。ラッキー!!


 そんな感じで、秘密基地に行くまでの足を私達は手に入れたのだ。


 ♪チャッチャチャー♪


 何処からかレベルの上がった音が聞こえた。


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あと、感想も書いてくれたらうれしいなー。


それから、同時進行で連載している人生逆行青春サッカー小説


『フットボールのギフト』~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~

https://kakuyomu.jp/works/16817139558047378416

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