第19話 秘密基地へようこそ その1
「食らえ!トマホーク クラッシュ!!」
ベイルさんの両腕から手斧が投げ出される。
「グギャァァァ」とバーニングスカルの脳天にものの見事にクリティカルヒット!!
「サファイヤ、今だ!!」
エルウッドさんの合図と同時にガスボンベをモンスターに向かって投げると……
「ファイヤ」とドンピシャのタイミングで火炎魔法を発動させるエルウッドさん。
ドーンッ!!!とモンスター達の中心で火球が弾けるとその場から一斉に逃げ出すファイヤーラビット達。
「逃がすかよっ!!」と弓矢を構えたノエルさんが言うと、一匹残らず正確無比なその弓矢で仕留めていく。
また、無傷のままでモンスター達をやっつけてしまった。敗北を知りたいものだね、ふっふっふ。
「おっしゃー、今日はこれで8戦8勝だぁー!」とこぶしを掲げてエルウッドさん。
「今日のノルマはもう十分ですね」といつも冷静なナジームさん。
「まだまだ、全然いけるぜ」とベイルさん。
しかし……「ノエルさんの弓矢がすでに半分以上無くなってきました。深追いはやめましょう。また、明日も勝ち続けるために」とナジームさん。
「まあ、良い頃合いだよな」とエルウッドさん。
「今日は倉庫の後片付けもあるしな」とノエルさん。
「じゃあ、今日はもう引き上げるとするか」とベイルさん。
「では、いきますよ。『リターン!!』」
ナジームさんが杖を掲げると私達の体が白い光で包まれ始めた。
明日からは再び2連休。今日は早めに切り上げていろいろと溜まっていた仕事をこなさなくてはならないのだ。
「えーっと、ナジームさん、一緒にお役所に手続き行ってくれますか?」
「はい、勿論ですよ」
「えーっと、ベイルさんやエルウッドさん達は……」
「分かってるよ、荷物、運んどくからな」とエルウッドさん
「おうよ、まかせとけ」とベイルさん。
「じゃあ、俺、ちょっと馬車借りて来るから」とノエルさん。
実はあの飲み会の次の日、改めて皆さんとしらふで話し合って、アニータさんの宿を引き払い、町はずれにある、使われてなかった農家の倉庫を借りて、そこでみんなで住むことを決めたのだ。
実は私が『グランド デポ』で買ってきたガスボンベとかオイル缶とかの危険物を、流石に借りている宿屋さんに置きっぱなしってのもまずいと言うことになり(ほら何かあった時に責任とれないじゃないですか)、みんなと話し合った結果、町はずれでどこか良い物件を探してもらうことになったのだ。
すると、その次の日には、町はずれにある今は使われてないレンガ作りの農業用の倉庫が空いているのを見つけてもらい、持ち主さんと交渉をしてとりあえず三カ月間だけお借りすることができたのだ。ほら、宿屋に住むよりもお金が安く上がるしね。
そして、何よりも、私達の『オペレーション グランド デポ』が新たな局面を迎えることができるのだ。ジャンジャジャーン!!まあ、大したことはないんですけど……
「おい、サファイヤ、無駄口叩いてないでさっさと手を動かせよ」とエルウッドさん。
失礼な、無駄口何て叩いてないですよ。皆さんに必要な情報を説明していただけなんですからね。
私はぶつぶつと文句を言いながら、埃だらけの廃屋を掃除する。アラエッサッサー。
うーん、この倉庫、前は干し草なんかをしまっていた倉庫だって聞いてたけど、結構埃が溜まってんなー。
ちなみにこの倉庫の大きさは百平米(ひゃくへーべー)、まあ、どんくらいの大きさかピンとこない方には、畳で言うところの64畳分、そして、部屋割りで言うと3LDKから5LDKくらい。5人で住むには十分すぎる大きさだ。
そして、早速ベイルさんとノエルさんはこの倉庫に隣接した場所にガスボンベなんかの危険物を置く物置をレンガで作ってくれている。だってさすがに寝る場所と一緒の所に危険物なんて置けないでしょ。
「だから、ぶつぶつ言ってないでさっさと手を動かせよー」とタオルを顔に巻いたエルウッドさん。うっさいなー、小姑みたいだぞ。
すると、倉庫の端っこの方で「チュー、チュー」とネズミさんが……「きゃー、ネズミー!!」
「ネズミくらいで悲鳴を出すな、普段はダンジョンでもっとエグイモンスターにあってんだろ!!」
日常と仕事場では心構えが違います。後で殺鼠剤買っておかなきゃ。
すると、目の前にプーンとやぶ蚊が……「あーも、やぶ蚊めー!!」後で蚊取り線香も買っておかねば。
「いちいち文句を言うな。蚊なんてアニーの所にもいただろうが!」
あーやだやだ。エルウッドさんとここで一緒に住むのなら、パーテーションでしっかり区切らなきゃ!!
そんな感じで午後は倉庫の後片付けに大忙し。
結局終わり切らずに、アニーさんにお願いしてもう一日宿泊を伸ばしてもらうことにした。
すると、アニーさん「そんなこったろうと思ったよ。次の客も入れずに部屋もそのままにしといたから、勝手に泊まっていきな」と。
あらやだ、なんだかすみません。よかったらそのお礼に、明日『グランド デポ』でなんかお土産買っときましょうか?
その日の晩は久しぶりにアニーさんの手作りの水餃子と麻婆豆腐に舌鼓を打ったのでした。チャンチャン。
そして結局その後、私の部屋に集合して『ユウヒ スーパーカライ』を飲みながら、みんなで今後の計画を話し合ったのでした。
「結局、今日の今日であっちに泊まるのってやっぱ無理だったんですよ」と私。
「そうだな、向こうの片づけと準備がとりあえずひと段落するまでここで泊まらせてもらおう」とノエルさん。
「だなー、向こうに泊まっても、結局のところ寝袋で寝るんだろ。疲れが取れないよ。ベッドとか一通り買いそろえるまでは当分はここで生活しよう」とエルウッドさん。
「まあ、あちらには、ガスボンベやサファイヤさんが『グランド デポ』で買ってきたアイテムを置く倉庫としてしばらくは使いましょう」とナジームさん。
「ええ、しばらくは、倉庫兼作業場ってことでいいと思いますよ」と私。だって、シャワーもトイレも無いんですものあそこ。
「そうなると、あそこまでの距離がなー」とエルウッドさん。
「「「「たしかに」」」」とみんな。
そうなのである。安全のために町中から離れた場所の倉庫を借りたのだが、そうなると、あそこに行くまで2~3キロを歩くのが正直おっくうのなのである。かといって、わざわざ2~3キロの為に馬車を使うってのも逆に面倒くさい。
うーん、自転車でもあればな……とそこでふと気が付いた。そうだ自転車を買えばいいのだ!!
「自転車を買おう!!」
「「「「はい?」」」」
「自転車です。自転車を買うんですよ!!」
「自転車って」とエルウッドさん。
「なに?」とノエルさん。
「あの馬車みたいなやつか?」とベイルさん。
「決めました。明日の休みを使って自転車を買ってきます」と私。
「「「「おおおおおー」」」」と自転車がまだどのようなものか分からない皆さん。
さあ、明日も一日忙しくなるぞ。
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