第17話 異世界からのプレゼント その4

 オヤッ!と言った感じのエルウッドさんとその仲間たち。


 私はそんな皆さんの反応を無視しながら発泡スチロールの蓋を取り出すと、氷に冷やされてキンキンに冷えた、銀色に輝く筒をエルウッドさんの前に差し出した。


「なっ、なんだよ、これは!!」とおっかなびっくりのエルウッドさん。


「ってか、これ、氷か?サファイヤちゃん」と発泡スチロールの中にある氷に驚くノエルさん。


 はい、そうですよ。氷です。私はそういって、発泡スチロールの中から氷をひとかけ取り出してノエルさんの掌に乗っける。


「うっひゃー、ちべてー。俺、冬以外で氷を見たのは初めてだ!!」と感激した様子のノエルさん。


「どれどれ、俺にも俺にも」と分け入って来るベイルさん。


「いや、この暖かな時期に氷とは……驚くことが次々と出てきますね。サファイヤさんの茶色い箱から」とナジームさん。


 エルウッドさんもその銀色に輝く筒はそっちのけで、発泡スチロールの中に入っている氷に目が行ってしまっている。本題はそっちじゃないんですよっ!!


「とにかく!!」私はそこで大声を出す。


「「「「はいっ!!!」」」」


「その缶のタブを開けてみてください」と。


「えーっとタブってこれか?」と言ってその銀色の缶の上に付いた缶タブを指で引っ掛ける。


 うーん……零(こぼ)しそうだなー。


「いいです。やっぱ私が空けます」そういって、エルウッドさんの前から銀色の筒を取り上げると、慎重にプルタブに指をひっかけ、缶の蓋をとりはずすと……「はい、これが昨日、エルウッドさんが馬鹿にした私の国のビール、『ユウヒ スーパーカライ 生ジョッキ缶』です!!」と。


「はあ……俺にお土産って……ビール!?!?」


「はい、私の国の一番人気のビールです。昨日あんだけ馬鹿にされて、納得いかなかったんですよねー」と私。


「銀のビールってこういう事だったのか」とノエルさん。


「はい」


 実は昨日、あまりに気分が良くなってしまい、調子に乗って皆さんの前で初めてビールを飲んだのです。


 実は今私がいるこちらの世界では飲酒制限が無いのです。


 というのも、清潔な飲料水ってのが場所によってはなかなか難しく、子供も度数の低いビールを飲む地域もあるということなのですね。


 もっとも、私がこの前までいた街も、そして「ダンジョン204高地」があるこのリョージュって街も、飲料水には事欠かないので、水代りにお酒を飲む習慣は無いのですが……


 私は「はい」、「はい」、「はい」といって、ノエルさんやベイルさん、ナジームさんの前にもキンキンに冷えたスーパーカライを置いていく。


 あと、昨日ビールを飲んでとってもがっかりしたのは……この国のビールって……ぬるいんです。


 まあ、確かに、氷も冷蔵庫も普及する前の世界ですから、飲み物を冷やすという習慣自体ないのですが……


 というわけで、昨日飲んだビールは私の口からしてみれば、お世辞にもうまいと言える代物ではなかったのです。


 で、気が付いたらエルウッドさんと言い合いになって「ビールが冷たいって訳わかんねーよ。ビールってのはよー、人肌くらいが一番うめーんだよ!!」とか(まあ、人によって好みはいろいろあるから何も言いませんが……)「だいたいなんだよ、その辛口のビールってのはよ!!ビールは苦いのが美味いんだよ!!」とか(まあベルギーのビールとかポップが効いて苦いビールが人気ですよね)「そもそも、銀のビールってのは馬鹿にしてんのか!!ビールは昔っから黄金色って相場は決まってだよ!!」とか(そりゃ、そんくらい、私だって知ってますって、私が言いたいのはそういう事じゃないんですよ!!)と私の大好きな『ユウヒ スーパーカライ』を徹底的にディスられてしまったのです。


 そんなわけで、大好きなものを馬鹿にさてイラっと来た私は、じゃあ、とりあえず、一回飲んでもらってみて、改めて感想を聞かせてもらおうと思ったわけさ。ふっふっふ。


 さあ、現代日本が誇る「銀色の憎い奴」の凄さをとくと味わうがよい。


 そして私は四の五の言わず、「かんぱーい」と言って、みんなの前で『ユウヒ スーパーカライ 生ジョッキ缶』を一気に煽った。


 くぅぅぅー、キンキンに冷えてやがる、このうまさ、悪魔的だぜ、涙が出る!!


 これこそが……『ユウヒ スーパーカライ!!』


 私がスーパーカライの350缶を一気に煽るのを見て、みんなも、恐る恐るといった感じで『スーパーカライ』に口をに付ける。


 だが、一旦口に付けたが最後、『ユウヒ スーパーカライ』は途中で口を離すことなど許してくれない。


「オッ、オッ、オッ」と言いながら、みんなも最後まで一気に煽る。


 そして……「「「「ぷっはーっ!!!」」」と今まで味わったことの無い衝撃に茫然自失のみなさん。


 すると、「……こういう事かぁぁぁ!!」と『スーパーカライ』の魅力にそれまでの価値観を一気にひっくり返されてしまったエルウッドさんはその場で机に突っ伏した。


 大丈夫ですよ、こういう反応、よくあちらの世界でも外国の人(特にベルギーやドイツ系)がしてましたからね。


「あっ、あの、お替りあるのかな、サファイヤちゃん」とベイルさん。


「はい、もちろんです」私はそう言って即座に発泡スチロールの中からキンキンに冷えた『ユウヒ スーパーカライ』を出す。


「俺も」「私も」そして、「俺にももう一本下さい」とエルウッドさん。


 私はキンキンに冷えた『スーパーカライ』をエルウッドさんの前に差し出すと、「辛口のビールはどうですか」と尋ねる。


「おいしいですっ!!」とエルウッドさん。


「じゃあ、キンキンに冷えたビールは?」と。


「たまりませんっ!!」


「銀色のビールは」


「サイコーです!!」


「よろしい!ならば、お替りだ!!」


 私はそう言ってプルタブを開けた『ユウヒ スーパーカライ』をエルウッドさんに差し出した。ブラボー!!

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