第16話 異世界からのプレゼント その3

「ナジームさんにはこれをプレゼントします」と私は金属でできた筒を渡した。


「いったいこれは何ですか?」そういって私が渡したステンレスのマグボトルをマジマジと見る。


「これは、私達の世界の水筒です」


「ほほーう、これはまた瀟洒(しょうしゃ)な水筒ですねー。でも、私も水筒なら持ってますよ」と年季の入った竹でできた水筒を取り出した。


「ええ、でも、普段使われている水筒、結構水が漏れてましたし、それにこの水筒だと、お茶を入れても半日は熱いままで飲めますからね」


「なんだよ、それ、魔法の水筒かよ!!」とエルウッドさん。


 まあ、こちらの世界では別名魔法瓶と呼ばれてますからね。


「いいなー、いいなー、それ」とノエルさん。


「俺のも無いのかよー」とエルウッドさん。


「おい、お前ら、あんまり、サファイヤちゃんから物ねだるんじゃねーよ、いい大人が」とベイルさん。


 あーっ、そっかー、やっぱこれも人数分買っておけばよかったかー。


 ナジームさん、よく、戦闘中に岩場に隠れてお茶を嗜んでたから、保温機能のある水筒なんかいいかなと思ったんだけれど。


「わかりました。明日行ったら、みんなの分買っておきます」


「「「ヤッター!!」」」とみんな。


 あれ、やっぱベイルさんも欲しかったんですね。


「ちなみに色は?」


「えっ、色なんか選べるの?」


「はい、選べますよ」


「じゃあ、俺、赤」とエルウッドさん。


「はい」


「俺は黒」とベイルさん。


「はい」


「俺は……若草色なんて……ないよねー」


「ありますよ、ライトグリーンでいいですよね」


「やったー!!」とノエルさん。


 まあ、なんというかキャラクターカラーそのまんまですよね。


 ちなみに私はサファイヤブルー。サファイヤだけにね(ドヤッ)


「あとそれからー……」


「おやおや、まだ何かあるのですか?」とニッコリとほほ笑むナジームさん。うーん、やっぱ、この人イケメンだわ。僧侶とは思えないアッシュグレーの長髪を後ろにまとめて、彫の深い顔に金属フレームのメガネが良く似合う。


 僧侶という肩書が無かったら、女ったらしか、女衒かと思ってしまうかもしれない。


「おや、どうかしたのですか?サファイヤさん」


 おおっと、思わず、美丈夫な顔に見とれてしまった。


「ああ、すいません。えーっと、これこれ」と私はそう言って、段ボール箱の中から布を取り出した。


「おや、これは……なんですか?」そういいながらその銀色の布を拡げていくと……「これは、ポンチョですか?」と。


「はい、これは、防炎ポンチョといって私の世界では火事の時に身を守るアイテムなんです」


「ほほーう、これはまた、結構おしゃれなポンチョですね」


 ナジームさんはさっそく羽織って私に見せてくれた。


 うーん、ナジームさんが羽織ると天女の羽衣のように美しい。


「はい、ナジームさんのシルクのローブ、エルウッドさんの火炎魔法の飛び火のせいであちこち穴だらけになってるじゃないですか」


「ああ、これですねー」とローブの穴の開いた場所を指で拡げる。


「ああ、せっかくのいいローブがダメになっちゃいますよ」


「でも、毎日のように穴が増えていくと、どうする気もおきなくなってしまいまして……」と頭を下げるナジームさん。


 まあ、ローブは僧侶のシンボルだからおいそれと着替えられない理由も分かる。


「ですので、その防炎ポンチョを羽織ればエルウッドさんの魔法の返り火を防げるかなと……」


「ありがとうございます。明日から早速使わせてもらいます」そう言うと、丁寧にお辞儀するナジームさん。


 こういうところは、ほんとにそつが無いのだ。是非エルウッドさんにも見習ってもらいたい。


「では、ナジームさんのお土産はこれで終わりです」


「はい、どうもありがとうございました」と再び深々とナジームさんは頭を下げた。


「じゃあ、お土産はこれでおしまいです」


「チョイ、チョイ、チョイ、チョーイ!!、俺のは、俺のは、俺のは!!」と大声を出すエルウッドさん。


 あーもーうるさいなー。


「えー、だって、エルウッドさん、ライトも買ったし、明日水筒買ってきてあげるじゃないですか」


「それはみんなも一緒!!」


「あと、ガスボンベもたくさん買ってきたし」


 私はそう言って、部屋の片隅に山積みされているカセットボンベを指さした。


「あれはどちらかと言ったら、お前の武器にもなるじゃねーかよ!!」と。


 まあ、なんて、予想通りの反応何だろう。


「まあ、それは冗談ですけれど」


「あっ、冗談だったんだ」と一安心のエルウッドさん。


「正直、何買って行けばいいのか分からないんですよ。エルウッドさんって」


「わからないって」


「伝統の黒魔法師みたいな黒い三角帽子とか被らなさそうだし」


「そうだな、大体こいつ、赤いバンダナだしな」とノエルさん。


「杖とかも使わないし」


「だよなー、コイツ、革の指ぬき手袋と革のジャケットとブーツだし」とベイルさん。


「防炎ポンチョとか持って帰っても「邪魔だ!」とか言いそうじゃないですか」


「そっ、そんなことは言わねーよ!!」


「ですので、直接何が欲しいのか聞いた方がいいかなーと、エルウッドさんの場合は」


「えっ……そういうのもアリなの?」と途端にコロッと態度を変えるエルウッドさん。もしもし、そういう態度は大人としてよくないですよ!!


「はい、まあ、ダンジョンいかない日は大体あっちに行こうと思ってますので、欲しいものがあったらあらかじめ伝えてください」


「いやー……なんかすいませんねー、サファイヤさん」といきなり下手に出るエルウッドさん。


 この人から「さん」付けで呼ばれたの初めてかもしれない。


「でっ、何にも買って帰らないのも悪いと思いましたから、エルウッドさんにも買ってきましたよ、お土産を!」


「いやー、なんだー、あるんじゃないかー、サファイヤも人が悪いなー」と途端になれなれしくなるエルウッドさん。お土産渡すの止めよっかな……


「じゃあ、エルウッドさんにはコレっ!」といって、段ボールの中から発泡スチロールの箱を取り出しテーブルの上にドンッ!!と置いた。

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