第6話 夢
「戻ったぜぇ。って、何だよ。今回もあいつは来てねえのか。」
ディノとブルータスがオルカの会議室に来る。
「これはこれは、二人ともこっぴどくやられたようだな。気を付けろよ。」
「ヘティト。てめえもいつか絶対ぶっ殺してやるからな。」
ディノとブルータスは席に着く。
「おぉ、それは怖い。なあ、カグラ。」
「……。」
「んで、情報ってのは何だよ?」
ベルドラがナーガに問う。
「今回わかったことは例のものとブラッドの関わりだ。」
「ブラッドが持っているのか?」
ブルータスが言う。
「確証はないがな。情報を得たのは妖奇だ。」
ナーガが妖奇を指差す。
「まあ、ブラッドと仲良しのあなたの情報なら信憑性も高いですね。」
「フフフッ。余計なことは言わなくていいのよ、エミリア。それより体の方は大丈夫?」
「今は問題はありません。が、時間の問題でしょうね。」
「フフッ。お大事にね。」
「2人ともその辺にしておけ。それよりも。レオンのやつがまだ来てないが、」
ヘティトが言う。
「レオンはやられた。やったよは明仙教の風音零というやつだ。」
「風音? 聞いたことない名だな。」
ディノが言う。
「ああ。だからレオンにかわる新しいメンバーを紹介する。」
「新しいメンバーって、オルカに入れるのはオルカメンバーを殺した者のみでは?」
ヘティトが言う。
「まあそうだな。だが、今回は異例だ。」
「バタン。」
ドアが開いた。黒いローブに巨大なフード。長い髪の毛で顔の隠れた男だった。
「これはこれは、また、とんだゲテモノが来たことだ。」
ヘティトが言う。
「ここは……。」
「起きたか、暁。3日も寝たきりだったから心配したんだぞ。」
風月が言う。
「すみません。」
「いやいや、ナイスファイトだったよ。ちゃんとライトの首はとったし報酬も貰えて、もうガッポガッポよ。」
風月が笑う。
「にしても、君、何で逃げなかったんだい? 私のために命かけたりまでして。」
「……。俺は、生きる目的ってのがわからなくて。」
「何だそれ?」
「機獣に家を襲われて、家族を目の前で惨殺されても、俺は悲しいとも感じませんでした。手のつけられない荒くれ者の父に、父を止めない母。そんな家庭が嫌でした。」
暁が自分の目元の傷を指差す。
「恋人もでき、友人も多くできて、俺はそれなりに満足できる環境を作ることができました。でも、ちゃんとした家庭で育てなかった俺が、周りとうまく付き合えるはずもありませんでした。」
「腹の底を見せあった親友も、心の底から愛を誓った恋人も。ついこの前まで、隣にいたはずの人たちが、あっという間に離れていき、いつの間にか敵になってました。」
暁が拳を握り締める。
「去年辺りから父は改心してくれて、ちゃんとした父親になってくれました。でも、俺は父を、母を許すことができませんでした。俺に幸福を与えてくれる両親は俺から幸福を奪いました。そんな両親への葛藤の日々の中で機獣が現れました。」
「機獣により、両親が惨殺されたとき、俺は心の底から喜びを感じました。そんな中で、たまに思い出すんです。優しかった両親を、友人や恋人と遊んだ日々を。そのうち俺の感情は喜びから悲しみや怒りに変わっていきました。ですが、この痛みが両親へのものなのか、機獣へのものなのか、葛藤してばかりの俺自身に対するものなのか。俺にはわからないんです。だから、何をすればいいかわからないんです。」
暁が言う。
「反抗期ってやつかな。君も色々とあるんだね。」
風月が言う。
「君の考えはよくわかるよ。気が合いそうだ。私には夢があるんだ。」
「夢、ですか?」
「ああ。たった一つのね。君とならうまくいきそうだよ。」
風月が言う。
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