第5話ダンジョンに入って…

 それはダンジョンに入ってすぐの事だった。


「私が先行しよう」


 剣を抜き、カッコよく言い放ったのはリアだ。こういう時のリアは物凄く凛々しくて本当にカッコいい。惚れ直しそうだ。


 辺りを警戒しながらもスタスタとダンジョン内を進んでいくリア。


「今の所は敵の気配はないようだ…。だが、気をつ――」


 そこまで言ったところで突然リアの姿が消えた。俺達はリアが消えた場所へと急ぎ向かう。


「お姉ちゃーん!?どこ!?返事してぇー」


「リアー!?返事するワン!?」


「リアーっ!!返事をしてくれぇぇー」


「リアさぁーん!?」


 ダンジョン内に俺達のそんな声がこだまする…。


 ―が、リアからの返答はない…。一体何が起こってどこに消えたんだ!?見えない何かが居るのか!?


「リアーっ!どこにいるワ―」


 そして声が聞こえなくなったのはクルルだった。すぐに近くに居た筈なのにまたしても何があったのかは分からなかった。


「くっ、クルルーっ!どこだぁー!?」


「い、一度…出よう、豊和君!」


 そう言って駆け寄ってくるルナ。そして俺の手を取ろうとして…ルナの姿が俺の目の前で一瞬にして消えてしまった…。


「ルナ?」


 目の前に居た筈なのに…。


「ルナぁぁぁ――――――!!」


「ルナちゃーん!」


 俺とメルの声だけが虚しく響き渡る…。


「メル!何でもいい!何か思い当たる事はないか!?」


 俺はメルに心当たりがないか聞いてみる。先程は覚えていなくても、ダンジョンに入った今なら何か思い当たる事、もしくは思い出した事がないか気になったからだ。危険はないとは言っていたけど…ルナにリア、クルルの身が心配になる。


「…ここは…もしかして…」


「何か思い出したのかっ!?」


「ええ…。3人の身に心配はいらないとそれは断言出来るわ…。いえ…でも…」


 何かを言い淀むメル。


「危険はないんだろ!?」


「危険はないけど…思い出した事が当たっているなら…彼女達は…今頃…」


「何か起こってるんだなっ!?何が起こっている!?早く言ってくれっ、メル!」


「ここは…たぶん…えっ―」


「メルっ!?」


 そこまで言ってメルの姿が消えた。


 そして、メルの姿が消えた場所へと駆け寄った次の瞬間…俺の視界がブレたように感じて…俺の意識はそこで途絶えたのだった…。






「―――ん」


 んっ?


「――君!」


 何か聞こえる…ような気が…


「目を覚まして豊和君!」


 その声に俺は慌てて目を開く。視界に入ったのは…


「ルナっ!?」


「良かった…目を覚ましてくれて…」


「ルナ!無事かっ!?どこも怪我してないか!?」


 俺はルナを抱き寄せ確認の意をとった。


「う、うん。無事は無事…だよ?」


 何か言い淀んだよな?


「何かあったのか?」


「周りを見たら…分かる…かも…」


 ルナにそう言われて辺りを見渡してみる。すると…


「…部屋だな」


 俺達が今居る場所は部屋だと言えた。そこは6畳位の部屋で床も天井もあり、この部屋への入口であろうドアもある。窓は…ない。


 俺が居る場所はそんな部屋の中央に用意された大きめのベッドの上だった。


「ダンジョン内に…宿?」


「ううん…それは…ちょっと違うと思うよ?」


 ルナがそんな事を言った。違う?でも…そうとしか思えないような…


「見て…豊和君。あのドアに書かれている文字を…」


 ルナに言われて視線をそこに向けると…確かに何か書かれているのが分かる。模様かと思ったが文字だったようだ。


「悪い、ルナ。俺には何て書かれているのか分からない」


 一体何て書かれているのだろうか?


「…うん。あれは…古代のエルフの文字で…え、エッチしないと出られない部屋って書かれているの」


 うん?どうやら聞き間違えてしまったようだ。まだ意識がハッキリとしてないようだ。


「ルナ…何て書かれているんだ?」


「だ、だからね。え、エッチしないと出られないって…」


「ああ…うん…そうか…」


 聞き間違えじゃあなかったみたいだ。何だよ、エッチしないと出られない部屋って!?前世の創作物で確かにそういうシチュエーションの話やら漫画やらが確かにあったけども!?


 なるほど…メルの考えそうな事というわけか?下界の様子見るのが好きだったみたいだしな…。


 そして…そう考えた時に俺は全てを察してしまった。メルが言い掛けたのは…ズバリ!


「ここは…エロダンジョンという訳か」


「…ええーーーーーっ!?そうなのっ!?」


 部屋の中にルナの驚く声が響き渡った。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る