第11話sideメルティーナ

「―ここは?」


「目が覚めたのかい?」


「…貴女は?私は一体…」


「おめぇさんは倒れていたんじゃよ…。私の家の前で…」


「そう…なのね」


 やっぱり…私は神様達には見捨てられたのね…。だから誰も助けてはくれなかったのね…。この人以外は…。


「何があったかは知らんが体調がよくなる迄は居たらええよ…」


「あ、ありがとう」


「風呂でも入って来たらええ…。その間にご飯の用意はしておいてやるきに…」


 私は年配の女性に言われた通りお風呂に入り、ご飯をご馳走になった。


「…美味しい」


 用意さてくれたご飯はお世辞にも豪華ではなかった。でも今までで一番温かくて美味しいご飯だった。


「おめぇさんは行く宛はあるのかい?」


「っ……」


「ないんか…。なら…暫くここで暮らすとええ…」


「…いいの?」


「そんかわし私の手伝いをしてくれや…」


「何の手伝いなの?」


「な〜に…簡単な畑仕事さ…。最近年のせいか腰が痛むでなっ…手伝ってくれる人がおると私も助かるしの」


「…うん」


 その日からその人の畑仕事を手伝う事になった。最初は畑仕事なんて汗臭くて泥臭くて…そんな風にやっぱり私は思ってしまった。ミミズなんて言う生き物が土から顔を出した時はその人にミミズを何処かにやってくれと懇願したくらいだ…。でも…


「ミミズがいるのは土壌がいい証じゃって!色々食べてくれるしの。ミミズを捨てる訳には…いかんのよ。増え過ぎん限りはの…」


 なるほど…ね。分かりたくないけど…ミミズにも役割がそれぞれあるのね…。ふと…私は考えてしまう…。与えられた役割を私は…ちゃんとしてた?こなしていた?答えは…聞かなくても分かっている。だから私はこうして…しかも…私はあの男の子の…


「ほれっ!後少しじゃっ!」


「…うん」


 そんな生活をし始めて…あっという間に2週間が過ぎ去って…その人が突然倒れたの…。私はその人をベッドへと運んで…でも…どうすればいいのか分からなくて…


「…どうやら…迎えが来たようじゃ…」


「迎えって…」


 迎えって…何?何なの?私には分からない。


「…人の死を見るのは…初めてかい?」


「死って…」


 迎えってそういう事なの…?まだ…私がここに来てそんなに日が経っていないのに…


「私は…娘を看取ったよ…病気じゃった…それからは…生きているとは到底言えない様な生活をしておった…」


 娘さんを…亡くしていただなんて…


「私自身…病気になって…後はお迎えを待つばかり…そんな時におめぇさんが…。最初は娘の生まれ変わりかなんて…そんな事あるわけないのに…」


 ああ…この人は…もう一度…会いたかったのね…


「…娘とは違ったけど…放っておけず…要らぬ世話じゃったか?」


「…そんな事ない…私は…誰にも助けてもらえなくなって…でも…貴女は私を助けてくれて…」


「すまんのぅ…もう少し、おめぇさんの面倒を見てあげたかったんじゃが…ここにある物は…家も含めておめぇさんが使うとええわい…。ここで暮らすのも…出ていくのも…お主の好きに…の?」


 ああ…神様…。どうか…どうか…初めてのお願いをお聞き下さい!一度だけ、彼女に…娘さんを…


 光が天から彼女に降り注がれる…。


『お母さん』


声が聞こえる…


『おお…そこに居たんだね…愛しい我が子よ…』


降り注がれいた光は天へと登るようにまた帰って行き…


もう離さない…


そんな声とともに光は完全に消え去り…


ベッドに横たわる彼女の顔は本当に安らかな…それでいて…満ち足りた顔をしていた…。




 

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