第5話犬っ娘の名はクルル

 俺達の前に姿を現したのは言うなれば犬っ娘。服装は胸を隠す為だけに存在してる様なシャツ。丈は短くヘソが見えている。ズボンは半ズボンみたいな感じだ。ちゃんとズボンから尻尾が出ているのが完璧だな…。見た目は人間とほぼ同じだ。耳と尻尾以外は人間。身長は140センチあるかないかだと思う。たぶん子供だよな?俺達に恐怖を感じているのか耳はシュンと垂れ尻尾はくるりと巻いている。


「かわっ!?可愛よっ!!?」


─ビクッ


 俺の声に体を一瞬びくつかせた犬っ娘。可愛過ぎてつい声に出してしまった俺を許してくれ…。しかし…しかしながら俺の前には犬っ娘…別の言い方をするなら獣っ娘がいるのだ…。俺が興奮するのも無理ないよな?現世の人間が見たら感動して涙を流す案件なんだぞっ!


「ほらっ、おいでおいで!」


「ちょっ!?豊和君何を!?」

「ルナ…心配しなくても大丈夫だろ…彼女に敵意はない」

「…だ、だけど…」

「何だ…妬いてるのか?」

「っ!?お姉ちゃん?」

「…分かってる…もう言わない」


 犬っ娘は恐る恐る近寄って来てくれた。そして俺の手が届く範囲に…。ここでやることは一つ…。これは現世の人間なら誰でも憧れることだろう…。そして実行する事と思う。


「…モフっていいか?」


「…も、モフ?─が分からないワン…で、でも痛くないなら…好きにしてワン…」


「マジでっ!?」


 その言葉を聞いた俺はまず頭にちょこんと生えている耳からさわらせてもらう…。


「わひゅん…しょ、しょこは…くうぅぅ~ん…はっはっ…わうっ…あっ…ううっ…」


 こうか?ここかっ!?これでどうだ!?こういう風にもモフれるんだぞっ!そしてそれだけでは終わらない!尻尾だ!許可はもらったんだ!尻尾もモフりまくるぞぉぉー!


「くぅぅ~ん……あうっ……はっはっ…こ、これ以上は…はうっ……あうっあうっ…むむむ、無理でしゅ…ワ…ワォォォ~ン…」


「あっ…あの~、豊和君?そ、それ以上は…その子が可哀想な気が…」

「…最早聞こえておらんだろう。それにしてもあの手技、堪らんな。じゅるる…私もああいう風にして欲しい…切に…」



 ─30分程だろうか?ついつい夢中で犬っ娘をモフらせてもらい、我にかえった時には犬っ娘は俺に寄り添いぐったりとしていた…。どうやらやり過ぎてしまったか?でも、久しぶりに犬と戯れたみたいで余は満足じゃっ!


「豊和君、やり過ぎだよ!彼女ぐったりしてるよ!?」

「仕方ないだろ?モフりたかったし、モフりたかったし、モフりたかったし…それにこの子も気持ち良さそうだっただろ?」

「そ、そうだけど…」

(3回も繰り返すなんて…どんだけモフりたかったの!?そんなにモフりたいなら私を…)

「ルナは自分がモフられたいだけなのだろう?」

「違っ!?違うからっ!!!お姉ちゃん後で話があるからね?」

「…私はないからな?」


 2人が言い合っているなか、俺は肝心な事を犬っ娘に聞いてみる。


「ごめんね、ついモフり過ぎてしまって。それで君、名前は?」


「クっ…クルル…」


「クルル。それでクルルはどうしてこんなところに居たの?」


「こ、ここは…遊び場だワン」


 なるほど…。ここから町は近いのか。


「そうだったんだね。ここで遊んでいて、俺達が来たから隠れていたんだね?」


「そうだワン」


 俺はクルルを抱き抱え…軽いな…。


「あ、あの~?…」


「君の住む町に行く途中だったんだ。だから抱き抱えて行くから村に着く迄の間モフらせてね?」


「わうっ?」


 あんだけモフっておいて何言ってんの?それなのにまだモフるっていうの?マジかコイツ?みたいな目で見るのは勘弁してくれ。だって言うなればそこにモフるべきモノがあるんだから仕方ないだろう?


 ルナとリアも顔をひきつらせている気がしたのは多分気のせいだろう…。きっと気のせいだ。



***


「ようやく町に着いたな…」


モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ


「そ、そうだね…」

「さ、流石に可哀想だと私も思うぞ豊和?」


モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ


「何が?」


「「モフモフし過ぎって事!!」」


 2人して言わなくてもだって癖になりそうなんだも~ん。途中から甘い声になってたからかなり気持ち良かったんだろうし良いだろう?モフモフ最高!



「人間…クルルに何をした?」



 町に入って間も無く年配の犬人族が一人敵意を剥き出しにして俺達にそう言って来たんだ。この人もモフっていいのだろうか?


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