第2話ルナ・メレスギル
「『
ザッシュッ!
─声が聞こえたと同時に何かが貫いた様な音。目の前のモンスターの動きが止まり頭部からは緑色の液体が流れ落ち地面にはモンスターの物と思われる肉片が散らばっている…。モンスターは糸を切られた操り人形の様に地面へと崩れ堕ちる…。
「うっぷっ………げぇぇ─」
吐いた…。盛大にぶちまけた…。何も食べていなくても水分と胃液が出て来て苦しい。とにかく俺は吐いてしまった。グロいなんてモノじゃない…。アニメとかでも初めてモンスターや人を手にかけると今の俺みたいにこうなってたりする。慣れるかな…これ?
こうならない為にするにはそれこそ魔法等で精神状態を和らげたり、精神耐性とかそういうのを付けてやり過ごすんだろうけど残念な事に今の俺にはない…。
「大丈夫!?」
声からすると女性だと思う。先程聞こえた声より優しそうな透き通る声でそう言いながら俺に駆け寄ると優しく背をさすってくれる。
「良かったらこれ使って?」
差し出されたのは水筒みたいなもの。中からチャプチャプ聞こえるのは多分水の音だろう。差し出された物を受け取り、出る物が出なくなってから俺は口の中の苦みが消える程うがいを済ませ、水を体内にゆっくりと運ぶのだった…。
******
「─え~と…改めて危ない所をありがとうございました」
俺は目の前の女性にお礼と共に頭を下げる。助けてくれたのは女性だった。それも金髪の超が付く程の美少女。年の頃は同じ位の年齢だと思う。思うと言ったのは彼女が多分…人間ではないから…。耳が尖っていて、弓を持っている。─と、くれば彼女はエルフと呼ばれる種族なんじゃあないだろうか?エルフって何かと長寿と耳にするしね。
「あっ…
「どういたしまして。でも貴女はどうしてここに?」
さて…この質問には何て答えるのが正解なのだろうか?ありのまま言った方がいいかな?いや、多少ボカシて伝える方がいいか?
「…気がついたらここに…ここはどこなんですか?」
「記憶がないの!?大変だよ、それっ!?それじゃあ…どうしてここに居るのか分からないよね?ここはゴブルンの森と呼ばれる場所で私達エルフにとっての狩場なの」
「…ゴブルンの森?」
「うん…さっきのモンスターがゴブルン。この森に生息しているモンスターなの…」
さっきのモンスター…ゴブルンと言うのか。うっぷっ…今はゴブルンの事は考えるのはよそう。別の事を考えよう…。
「…そういえば、さっきエルフって言った?」
「えっ、エルフを見るのも初めて?」
「うん」
(漫画やアニメでは見た事あるんだけどね)
「あっ…そういえば自己紹介もまだだったね?私はエルフのルナ・メレスギル。みんなにはルナって呼ばれてるよ」
「ルナさん…」
「ふふっ…ルナで良いよ?君は…名前は覚えてるの?」
「うん。名前は豊和…」
「豊和!?」
「えっ…と、どうかした?」
(あっ…異世界に来たからには名前変えた方が良かったかな?)
「う、ううん。ごめんね、珍しい名前だったから…」
(女の子に豊和って…よっぽど彼女のお母さんは男の子が欲しかったんだね…。名前からすると…
「そ、そうだよね…。自分でも珍しいと思ってたんだ…。そ、それより…ル、ルナに聞きたい事があるんだけどいいかな?」
(ちょっと強引に話を変えすぎ…たかな?それにしても女の子の名前を呼び捨てにするのもなんだか緊張するし…そっちもなんとなく慣れないな…。あんまり女の子と喋るなんて機会も無かったし…仕方ないよね…)
「あ…うん。何かな?」
「町ってどっちの方角?」
「あっ…そうだよね。大変な目に合ったのにごめんね?気が利かなくて。丁度私も町に帰る所だったから一緒に帰ろうよ?見た所モンスターとも戦えないよね?」
「宜しくお願いします」
俺の返答は即答だった。レベル1だし…考えたら武器もないしさ、当然彼女と一緒に帰る以外の選択肢はない。見た事ない程可愛いし、いい子そうだし、大丈夫だよね?
「うん。任されました!」
「っ!?」
そう言って笑うルナの笑顔は童貞の俺には眩しすぎるぜ…。そして、町へと向かい俺達はその場を後にした。ルナの後ろを恐る恐る歩く俺…。くっ…早く強くなりてぇー!
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