第24話 召喚勇者様のお供をしています
王子の手にした文庫本。表紙には赤い鎧(全身を包むものではないので防具と呼んだ方がいいかもしれない)を身にまとった長い黒髪の女性が微笑み、その背後で陣羽織を着た少年が苦虫を噛み潰したような表情で控えている。この二人が主人公なのだろう。よくあるライトノベルの表紙の構図である。
「これがあの人が書いたお話……」
王子も学校の図書館でその類の本を読むことがあったが、自宅では小説より漫画を読むことの方が多かった。クラスメイトで読書好きの部屋の本棚にはライトノベルも多く置かれていた。
作者からもらった本ということもあり、これまでで、最も真剣に本を読み始める機会だった。
「鎖かたびらは重くありませんか? 姉さん」
物語は途中の一シーンから始まった。後に、勇は王子にこのような物語の始まり方を突然性と説明してくれた。読者を即座に作品世界へ引き込む効果がある。小説における始まりの突然性は、物語の冒頭で読者に対して意外性や興味を引く手法を指し、このアプローチは物語にダイナミズムや緊張感をもたらし、読者を引き込んで物語に没頭させる効果がある。例えば、
インパクトのあるシーン: 物語が驚きや興奮をもたらすシーンから始まる、物語の中で重要な出来事や転機を描くことで、読者に強い印象を与える。
未解決の謎や問い: 物語の冒頭で未解決の謎や問いを提示することで、読者の好奇心を刺激する。この未解決の要素は物語が進むにつれて解明されていくことが期待され、読者はその解決を追い求める。
キャラクターの不意な変化: 物語がキャラクターの思わぬ変化や困難な状況から始まる場合。このような突然の展開は読者を引き込む一因となります。
ダイアローグやアクションからの始まり: 物語がキャラクターたちのダイアローグやアクションから始まることで、物語のペースを速め、読者を物語に引き込むことができる。
例えば、冒険小説の冒頭で主人公が謎の島に漂着する、サスペンス小説の冒頭で殺人事件が発生するなど、物語の始まりを突然で予測不能なものにすることで、読者は一気に物語に引き込まれることになる。
作中の二人は目立たぬ装束で、もちろん甲冑も置いてきた。
「大丈夫よ。これ思ったより軽いのね」
二人は鎖を隠せるよう、左前に合わせる短い着物を重ね着していた。旅において女性は日焼けよけの布を頭にかけることが多い。先程も同じような出で立ちの女性とすれ違った。足元は細身の袴と言うよりモンペに近いパンツスタイルで上着の裾を帯の下に収めていた。靴は柔らかい革のブーツを藁で編んだブーツカバーで覆った。
この地方は日本ほど四季の寒暖差が大きくない。それでも今は暦の上では秋であり、旅が楽な時期だった。
「列車があると旅も自由にできるのにね」
「カオスティア帝国の蒸気機関車のことですか?」
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