第22話

もっとも「カケヨメ」の感想欄は「よかったところ」、「気になるところ」、「一言」に記入欄が分かれていて3つ合わせても100字程度の短文投稿が多い。作品の熱心なファンになると、更新ごとに毎回コメントを入れてくれる人もいる。そういう人が入れてくれるコメントは「今回も面白かったです」とか、「次回更新も楽しみにしています」、「お忙しいとは思いますがご自愛ください」とか作品だけでなく作者を気遣ってくれるコメントであったりすることが多い。


コメントするのが苦手でも無料で読ませてもらっているのだから何かたまには感想書かなくちゃなと義務感に駆られたときには文章中の誤字脱字や言葉の誤用を指摘するとよい。作者にしても推敲に時間をかけすぎると更新の妨げになる。もちろん投稿した作品が本になるときには何度も何度も推敲しなくてはいけない。プロの編集者が校正もしてくれる。


だから投稿時にはあえて推敲に労力を割かないと言う人もいる。作品の評価は完成した時点で決まるという考え方だ。それでも読者から指摘されれば有り難く修正させていただきますというスタンスでいる人が多いが、誤字脱字程度はいちいち指摘いただかなくても結構ですという姿勢の人もいるからそれは過去の感想欄を見てみるとよいだろう。


「ねえ」


「うん?」


「教えてよ、読書感想文の書き方」


「ふむ、そんなに言うなら。その本いま持ってる?」


「はい」


少年はトートバッグから本を取り出し、勇に渡した。


「読書感想文を書くのも久しぶりだからちょっと読ませてほしい」


「いつ教えてくれますか?」


「じゃあ、月曜日の夕方にでもまたここで。今日はこれから用事があるんだ」


「お願いします……あの」


「うん?」


「みんな先生のこと、ひがしかたさんとか、とうじょうさんとか呼んでましたけど、どっちが本当の名前なんですか」


「東上武はペンネームだよ。ほら」


勇は自分の名前が書かれた本を少年に見せた。


「やっぱりすごーい。本当に作家なんだ」


「いやー、そんなこと……あるよ(本日2回目)」


考えてみれば作家に直接作文指導をしてもらえるなんて贅沢なことであるわけだが、近頃の小学生にはそんな感覚はあるのだろうか? 後で聞いてみようと思う勇だった。


勇と別れた王子は団地内の自宅に戻った。17時近く、母は平日休みの仕事をしているので土日はどちらか1日は不在だった。


母が帰ってくるのは19時近い。出かける前に昼食を冷蔵庫に、たっぷりの紅茶を魔法瓶に用意してくれていた。育ち盛りである。夕食まで紅茶とおやつを食べることを許されていた。


「今日は面白い人に出会ったな」

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