🌅1−1章 あけまして開幕 はろー平成

『4:44 16:44 4:44:44』

 午前4時44分と午後4時44分の境界の入口に入ってはいけない。

 そう俺の地域では言い伝えられてきた。境界の入口というのはビルの真下、赤信号の交差点、踏切の中、海や川の中、太めの木の枝、ドアノブ。山の入口や鳥居や鴨居、門や橋の渡る前。辻の地名に入る前やトンネルの入口など、その他諸々。境界の入口となる場所は多くある。

 ふっとした瞬間に、入口になってることがあったりするんだよな。けど、俺の地域はなんでも、この時間「午前4時44分と午後4時44分」のときの入口に入っちゃいけないんだってさ。

 なんでもあの世につながるとか、境界の世界にいっちゃうとか、人食いの妖怪の住処に入っちゃうとか。なかなか曰く付きの時間なんだ。

 なかでも「4時44分44秒」のときは最悪と言われているんだ。

 見ての通り、4という言葉はよんと読むが、『し』とも読む。そのしは『死』でもあるからなんだ。

 あと、午前4時44分と午後4時44分って、いわゆる暁または彼は誰時。逢魔が時または黄昏時に近くなるからだ。時期によりけりだが、俺の地域では入口になるとこの時間が危険とも言われているんだ。

 危険な証拠として、俺の地域では昔から行方不明者が何気に多いことでも有名だったりする。前は、一つ橋の向こうにある息子がいなくなったり、最近では近くの叔父さんがしばらく帰ってこなかったといってた。

 ちなみに、しばらく帰ってこなかった叔父さんは今帰ってきている。なんでなのかというと、運良く向こう側の「午前4時44分と午後4時44分」の時にできた入口から出れたようなんだ。逆に言うと、その時間のときに入口を見つけて入らないと出れないということだ。このように行方不明者がちらほら帰ってきている話もあれば、帰ってきてない話もある。

 けれど、二度と帰ってこないのは、あの最悪の「4時44分44秒」の話だ。

 俺は興味なかったんだけど、中には馬鹿なやつがいてさ。あの「4時44分44秒」を試してみようって奴らがいたんだ。

 それが、町にある橋の手前で行おうとしていた。俺は通り過ぎてたときに見かけたぐらいだけど、流石に駄目だと直感して声かけたが。


「はぁ? うんなもん知るもんか! さては、弱虫だなww」


 と言われ、流石にムカついたから止めなかった。俺は無視して去ろうとする前に、気になった。あの最悪の「4時44分44秒」で境界の入口と言われる橋を渡るとどうなるか。

 スケープゴートみたいな感じで悪いけど、俺は遠くから見守った。時計を見ながらあの試している奴らは時がなるのを待っている。そして、「4時44分44秒」になったとき、あいつらは橋を渡ろうとして姿を消す。さすがの俺は驚いて橋の手前まで来ると、俺を馬鹿にした奴らはいなかった。

 足と手だけを残して、消えていた。

 この状況に俺は混乱して急いで通報して警察を呼んだ。事情聴取を受けたけど、俺自体は本当に何もしてなかったし。犯人という疑いを持たれることなく、事情聴取から開放された。

 ……まあそうだよな。刃物も持ってないし、切断面が斜めにスッパリと切られたような感じたってし……どうしようもなく、その日の俺は帰路を辿ってしばらく悪夢に悩まされた。


 しばらくして、そいつ等の行方不明は町の中で話題になった。捜索隊も動いたけれど、成果はなかった。

 時間とともに行方不明事件は風化していく。そいつらは今でも帰ってきていない。そして、「4時44分44秒」が最悪な理由。なんでも4が多いから死の国にもつながるだろうというとんでもない理由だった。うんな馬鹿なと思ったがまあ事実として俺の町で起きて、それを俺が目撃してしまったんだから信じる他ない。そう言い伝えられていた故に、俺たちの地域では早めの下校と遅めの下校を推奨している。


 県外や他の地域に来た知らないやつほど、この言い伝えを信じず向こう側に迷い込むことが多い。



 そう言えば、県外から帰郷した友人曰く、俺たちの地域で起きたことが他の県外の地域でも起きていると話したな。いや、まさかと思うけど……俺たちの地域以外で起きてるってことないよな?



『4:44 16:44 4:44:44』

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