子猫の正体②

「これはあなたの意のままに食べ物が出てくるんですか?」


<勝手に食べ物がでてくる物体>をながめまわしながらリアムが聞いた。


「ううん、朝と夜の2回出てくるかな、多分いつも同じタイミングで」

 

  「ふうん。今日はまだ出てこないんですか?」


「そうだね。でも、もうすぐだと思うよ」


その言葉に答えるかのようにカチッと音がして〈勝手に食べ物が出てくる物体〉から粉状のものがジャラジャラと出てきた。


「何かしました?」


「いや何も」


「ふうん」


リアムは微動だにせず、それを見つめて言った。


「でも、もしかしたら、人間は魔法が使えるのかも。彼らのまわりでは不思議な出来事が多々起こるんだよ」


「この世界では猫は魔法が使えなくて、人間は使える。それも考えましたが......。 とにかく僕はもう行きます」

                  、、

  この世界……彼が何度も強調する、このとはどういう意味なのだろうか。ノアは去っていくリアムの後ろ姿を見送りながら思った。彼の言い方はまるで、世界がいくつもあるというような感じだ。そんなわけないのに。


「ねえ、リアムあなた、何者?」


おもむろに、ノアはリアムの小さな背中に向かって呼びかけた。


リアムがゆっくりと振り返った。


「僕はどこにでもいる取るに足りない子猫ですよ」


何もかも見透かしているような、その目がきらりと光った。


「あなたはまるで、世界がいくつもあるような言い方をした。 私にはあなたが幼い子猫にはどうしてもみえない」


「あなたは知らないでしょうけど、世界は無数にあるんですよ」


一瞬の沈黙を挟み、リアムが答えた。


ノアは信じられない思持ちでリアムを見つめた。彼はいったい何を言い出すのか。


「なぜ……もしそれが事実だとして、どうやってそのことを知り得たの?」


リアムがはっと足を止め自責の表情を浮かべた。 リアムはこの場から立ち去ろうとしたようだが思いとどまり、私をまっすぐ見つめた。


「今から言うことを他言しないと誓いますか?」


  ノアは困惑したままうなずいた。


  「僕は異世界から来たスパイなんです」

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