第56話

「そうだ!翼ちょっと私の部屋にきて!」


ケーキを食べ終わった私は大事なことを一つ忘れてしまっていたため、翼に声を掛け部屋まで一緒にきてくれる


「前来た時は気にしなかったけど、この部屋って真っ黒だよな・・・」


「私が黒が好きだからね。あまり女の子っぽくないって思った?」


「まあ女子の部屋のイメージって白かピンクみたいなところあるから・・・妹の部屋も白で可愛い感じだし」


「確かにこの黒を基調とした部屋は珍しいかもね」


鞄からこの前お財布と一緒に買ったものを取り出しながら会話をする。


「翼・・・突然だけど、翼は私と一緒にいてめんどくさいって感じたことある?」


「え?本当に突然だな・・・なんでだよ」


「良いから・・・答えて?」


これはこれからの私たちが一緒にいられるか聞いておかなければいけないものだ。回答が私の望んでいないものでも・・・


「まあぐうたらだし、他人にはめちゃくちゃ八方美人だし・・・」


「・・・」


「でも八方美人は凛がしなきゃいけない仕事だし、ぐうたらなのも外に出ている時は微塵も出さないのは素直に尊敬できる。いつも頑張っている凛を面倒なんて思ったことないよ。その証拠に俺は凛からは離れていないだろ?」


そうか・・・私のことを見るのは面倒ではないのか・・・良かった・・・!


「じゃあこれからも一緒にいてくれる?」


「当たり前!この前も言っただろ?俺は凛が嫌だっていうまで凛の側からは離れないって!」


「良かった・・・それじゃあこれ・・・」


「なんだこれ?ブレスレット?」


私のもう一つのプレゼントは革を基調としたブレスレットだ。黒い革に金属の留め具には可愛い犬が描かれている


「それと一緒の物がもう一つあるの。もう一つの金属部分には猫が描かれているんだけどね」


「というと・・・?」


「お揃い!私たちお揃いのものって持ってなかったじゃん?だからどうしてもお揃いのものが欲しかったの!これならあんまり目立たないし、デザインもシンプルだから何処へでもつけていけるかなって思ったの」


「お揃いか・・・確かにそういうのは何も持ってなかったな。別にどちらも欲しいって言い出さなかったし」


「だ・か・ら今回プレゼントさせていただきました!」


「とは言ってもなぁ・・・」


「これ一緒に着けたいの・・・だめ・・・?」


翼が渋るため、今の私ができる最高の可愛い表情と上目遣いをしてみる。今までおねだりというものをしてこなかったためできているかはわからない。


「うっ・・・ダメって訳じゃないけど・・・お財布も貰ったのにこのブレスレッドまで貰うのは流石に気が引けるというか・・・これも大分高かっただろ・・・少なくとも一万以上だ」


この反応は可愛い表情ができているな!ならよし


「さっきも言った通り良いものにはそれなりにお金がかかるのは当たり前、私は値段でものを買うかどうかは決めないし、このブレスレットも私が欲しくて買ったもの。それにこれは誕生日プレゼントとは違うよ」


「なら・・・」


「これはいつも私のそばにいてくれてありがとうっていう感謝の印!だから受け取って!」


「感謝って・・・俺は好きで凛のそばにいるんだぞ?お礼が欲しくて一緒にいるわけじゃない」


翼は少し怒った様子で声をあげる。少し誤解を招く言い方をしてしまった・・・


「私もそれは分かっているよ。でも何かお礼がしたかったの・・・翼は私がどんなに我儘を言っても飲み込んでくれて、コーヒーのことも色々教えてくれた。学校でも私と一緒にいて笑わせてくれる、今まで私の周りにはそんな男の子は居なかった。どんなに私に良い顔をしてくる人がいても、どれも私の顔目当て。私の中身を知ろうとしてくれる人は一人もいなかった。でも翼は違う。翼は私がぐうたらだと知っても迷わずに良いと言ってくれた人、困っていたら助けてくれる人。そんな大切な人に何かお礼をしないと私の気が治らないの!」


思わず私も声を荒げてしまう、しかし今言ったことは全て事実だ。


「だから・・・受け取って・・・?」


「分かった・・・これも大事に着けさせて貰うよ。凛から離れるかもしれないその時までずっと」


私の言葉を受け取ってくれたようで、翼も素直にブレスレットを受け取ってくれた。やはり彼には似合っている。


「そんな時は来ないよ・・・」


お互い笑いながらブレスレットを左手に着ける、きっとこのブレスレットは忘れられない物になるだろう。どんなことがあってもこのブレスレットだけは外さないでいようと心で誓った。
















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