第54話
「お待たせしました。それでは食べましょうか」
机の上には様々な料理が並べられ、どれもこれも美味しそうだ。私がこの前リクエストしたきんぴらも置いてあるため、きっと翼が作ってくれたのだろう。
食前の挨拶をしてから、それぞれ思い思いに料理を取って口に運んでいく。
「さて、改めて自己紹介をしようか。凛の父の
お父さんは礼儀正しく、しっかりと頭を下げながら自己紹介をする。
「白藤 翼です。凛さんにはいつもお世話になっています!」
「いやいや、こちらこそ凛がいつもお世話になっているみたいだね。外での助けにはいつも助けられていると聞いているよ」
実際翼にはいつも助けられている。私の性格上やはり気が抜けている時はなかなか周りが見えずに、なかなか危ない時もあったがその時も翼が私のことを隠してくれたり声をかけてくれたりする。一緒に歩いている時も自ら車道側を歩いたり、私が重いものを持っている時は翼が代わりに持ってくれる。そう言う意味でも彼にはたくさん助けてもらっている。
「娘のことを見てもらえる人がいると言うのは親としても安心でね、玲さんと一緒にこれからも凛のことを頼むよ」
そこは私にもっとしっかりしろと言うのが親としての勤めだと思うが・・・昔からの私を知っているからこそもう諦めているのだろう・・・私もそろそろしっかりするように努力するか。
「自分はそこまで彼女のことを助けているという自覚は無いのですが・・・」
「凛が風邪を引いた時にもしっかりと看病してくれたのだろう?そんなことを率先としてやってくれる人は意外と少ないからね、ありがとう」
「友達なんですから当たり前です。自分もテスト勉強の時にすごくお世話になりましたし、一緒に勉強をしたおかげで教えてもらった教科は満点を取れました」
「それはすごい、凛も翼くんもよく頑張ったね」
「私もテスト勉強の時はそこまで特別なことはしていないよ?翼たちが真面目にテスト勉強をして、私はあくまでその手伝いをしただけ。だからあの点数は誇っていいものだよ」
「A4用紙にあそこまでみっちりと勉強方法を書いて教えてくれる人なんて凛以外にはいないよ。苦手科目の国語で満点が取れるとは思ってなかった」
「翼は地頭が良かったからね、コツさえ掴んでくれればすんなり理解してもらえて助かったよ」
「お前の教え方が良かったの」
「翼が頑張ったの」
「本当に二人は仲が良いんだね」
二人でお互いを褒めあっているを見ていたお父さんが微笑ましそうに呟く。その瞬間二人とも、親の前だと言うことを忘れてしまっていたため急に恥ずかしくなり、黙りこくる。
「二人とも楽しい学校生活を送れていそうで何よりだ」
うーん・・・まあ楽しいか?クラスメイトの間に確執ができてからは私が話すのは翼たち三人と玲さんのみだ。しかしその四人以外と喋っても家のことばかり考えてしまい、どうしても演技をしなければいけないため疲れる。前の時よりも今の状況の方が格段楽しい学校生活を送れているだろう。
「私は翼と玲さんがいればそれだけで良いからね」
「自分も自分の仲がいい男子二人と凛がいるから学校生活は送れています」
これは紛れもない本心で翼もきっとそうだろう。二人に会うためという私が学校に通うための理由にもなっている。演技をしなければいけない人間と関わるのは非常に面倒なため今の環境は非常にありがたい。私が頑張れば良いのは、家の評判を落とさないことと、勉強を頑張ればいいだけなのだから。
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