第51話
「凛は俺にとっては大切な人なんだから新しい一面を知れるなんて嬉しいことだよ」
「っ・・・!」
この人はそう言うことをまたサラッと言う!その言葉が私にとってどれだけ嬉しいのかを理解していないのか?!
彼の思いがけない一言でどんどんと顔が赤くなっていくのを感じる。きっと耳まで真っ赤になってしまっているだろう。
「人の数が増えてきたな・・・待っている人も居るみたいだし、そろそろ出るか」
丁度人が増える時間帯になってきたため、もう飲み終わっている私たちはお店を出ることにした。丁度回答に困っていたため、このタイミングは助かった・・・
「おいしかったね」
「だな、この後の予定は少し歩いて違うお店に行くんだけど歩けそうか?」
「もちろん、おしゃべりしながら行こうか」
お店を出て、私たちは次のお店へと向かうことにする。
さて・・・翼へのプレゼントだがいつ渡そうか・・・?プレゼントを買ったのは良いが渡すタイミングというのは全く考えていなかった。本当はお店を予約してそこで渡したかったが、今日のプランを考えてくれたのは翼のため、私がお店を予約するということはできなかった。いや、しようと思えば出来はしたのだが、何も予定を聞かずにして後々行けないなんてことになら、しないほうが賢明だろうと思ったのだ。
「凛、どうした?」
私がお店の前から動かずに、難しい顔をしていたからか翼は心配そうに声を掛けてくれる。
「なんでもないよ、少し考え事してただけだから大丈夫」
「そうか、何かあったらすぐ言ってくれ」
「うん、ありがとう」
いけないいけない・・・今は翼が私をエスコートしてくれているのだから、余計なことは考えずにとにかく楽しむことに徹しよう。それに今日のために用意をしてくれた翼にも失礼だ。
「今日のプランって聞いてなかったんだけど、今日って何店舗くらい回るの?」
「うーんと、五店舗は回るつもりだよ。多すぎても覚えられないし、凛にも新しくお気に入りのお店を見つけて欲しいし、今回の元々の目的は豆の特徴を覚えてもらうことだからな。あまりたくさん飲んでも意味がないから少なめだよ。多分夕方ごろには解散になると思う」
「夕方・・・」
そうか夕方ごろには解散になってしまうのか・・・今日はプレゼントも渡したいし、めいいっぱい翼のことを祝いたかったが、リミットが決まっているならそれまでに渡さないと・・・
「どうせなら晩御飯も一緒に食べて行くか・・・?」
私が露骨に残念がってしまったためか、翼は晩御飯のお誘いをしてくれる。
こうしてすぐに顔に出てしまうのは私の悪い癖だ・・・
「食べる!いや、食べたい!そうだ、今日は家で食べていきなよ!今日はお父さんもいるし、お父さんも翼に会いたがってたし!」
「えっ・・・」
家なら好きなタイミングで彼にプレゼントを渡せるし、人目を気にする必要がないためベストアイデアだと思い提案をしてみたが、お父さんという単語を聞いた翼は、この前家に泊まった時と同じようにガチリと体が固まってしまった。
「あれ・・・嫌だった・・・?嫌なら全然大丈夫だよ?外で食べて行こう」
「いやいや!嫌なわけじゃないんだ!本当に!ただ少しお父さんと会うというのは緊張するというかなんというか・・・」
ああ、なんだそんなことか・・・
翼は両手をブンブンと振り、本当に私の家に来ること自体は否定してはないことが分かる。
「大丈夫だよ、優しい人だし翼とは本当に会ってみたいって言ってたからさ。そんなに緊張しなくても大丈夫!」
「本当かなぁ・・・」
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