第43話
二日目の勉強会も終わり、俺と明は並んで校門をくぐる。オレンジ色の空の下をこうして二人で歩くというのもすごく懐かしく感じる。つい最近までやっていた事のはずだが、凛と一緒に行動するようにしてなってからはさっぱりだった。懐かしく感じるのも凛と一緒にいる時間が濃密だったからだろう。
「しかし今日はめちゃくちゃ面白かったわ。二人がまさかあそこまで仲が良いとは思わなかったし、それを間近で見ることが出来たのはラッキーだったわ」
「人の恥ずかしいことをそんな簡単に蒸し返すんじゃない」
白藤と明が俺と凛の行動を再現すると言い出した時までは、そこまで酷い事はしていないだろうと思っていたが、実際に見せられてしまうと何も言い返せない程、俺たちの距離は近かった。
「別にそんな恥ずかしがるようなことでもないだろ?お前ら付き合ってるんだから」
「付き合ってない」
「え・・・まじ?」
「まじ」
「俺、てっきりもうとっくに付き合ってるって思ってた」
明はうーんと唸り、何やら考え事をしながら俺の前を歩く。確かに俺たちの距離感は普通なら付き合っていない間柄の男女がするべきでは無い距離感だと言うことは分かっている。しかし俺たちはどうやらあの距離感が心地良いのだ。
「翼は姫と付き合いたいとか思ったことないの?」
明は急に足を止めて、頭の後ろに腕を回しながら聞いてくる。明の背景の夕日が眩しい。
「思ってるよ。あいつと仲良くなってからずっと」
俺は凛のことが好きだ。彼女の事は守りたいと思っているし、誰にも触らせたくないとも思っている。しかし凛にとっては俺はただの男友達。俺が勝手にそんなことを思っていても凛からすればただの迷惑だ。
「それじゃあ早く告っちゃえよ」
「無理に決まってるだろ?そんな今の関係性が全て壊れるようなハイリスクな行為をそんな簡単にできるわけないだろ」
「じゃあどうするんだよ?そんな臆病なこと言ってると一生姫とは付き合えないんだぞ」
そんなことは俺も分かっている。だから俺もそう簡単に諦めた訳では無い。
「凛に俺のことを好きになってもらう」
「好きになってもらうってお前・・・確かにお前の顔が良いことは疑いようがない事実だけどさ」
「そんな顔なんかで好きになってもらう気はねぇよ。外見だけで好きになってもらうなんて、そんな簡単な方法で凛が人のことを好きになるわけがないことは俺も分かっているし、そんなんで好きになってもらったところで嬉しくない」
そんなんで好きになってもらっても嬉しくともなんともない。それに凛が面食いだとは思えない。
「それはお前に告ってきた女子たちはみんなお前の中身じゃなくて、顔だけを見てたってわかるからか?」
「まあな」
今まで、人よりは確実に多くの人から告白をされてきた。しかしその告白のどれもが俺の顔目当てということはすぐに分かった。話したこともない人からも告白をされた時は恐怖を感じたほどだ。
「別に顔だけで選ぶっていうのも悪くはないと思うんだけどなぁ・・・一目惚れっていう言葉もあるだろ?」
明は一目惚れをしたことがあるのか、少し言いずらそうにして呟く。
「別に俺も顔だけで選ぶことが悪いとは言わないよ。一目惚れも良いことだと思う。それほど自分の理想に合った顔をした人間に会えることなんてそうそうないからな」
どこかの研究では一目惚れをした人と結婚をした場合は幸せになっていく傾向もあるという結果も出ているらしい。この結果がいかに信用できるかは定かでは無いが、確かに一目惚れから恋が始まる人もいるため頭ごなしに否定する訳ではない。でも俺は外見で人を選ぶのではなく、凛の全てを好きになってから告白をしたいし、俺も凛に好きになって貰いたい。それだけだ。
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